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side you


携帯に入っている菊池風磨の四文字を眺める。

彼のことを思い出すと胸が温かく、優しい気持ちに包まれる。
どうしてだろう。
全然彼のことを知らないのに。


purururu

「うわっ」


突然一夏からの着信があり驚いて携帯を投げそうになった。
よかった、一夏で。

「もしもし」
「あAー、コンビニ行くの付き合って」

時計を見ると、19時過ぎ。
まだ母が帰ってくるまで時間があった。

「わかった」
「Aの家の前にいるから出てきて」

「えっ」



急いで出ていくと玄関の前に一夏が立っていた。
お互いTシャツに短パンにサンダル。
見慣れた部屋着のまま。

「いきなりびっくりしたんだけど」
「驚かせたかったの」
「なにそれ」

ぶらぶらとふたりでコンビニに向かう。

コンビニの中はクーラーがよく聞いていて涼しかった。
一夏は炭酸水とお菓子を買っていた。


「弟にパシリにさせられた」
「いっつもゲームに負けるもんね一夏」

不貞腐れた顔をして店から出てくる。
でも内心嬉しがっているような気がした。

歩いてすぐ、もう家が見えた。


「ありがとね」
「ほんとに付き合うだけだったけど。ばいばい」

軽く手を振って反対方向に歩いていく一夏を見送る。

ふと家の窓を見ると、リビングに明かりがついているのが見えた。
あ、帰ってきてる。


玄関の扉を開くと、そこには母のハイヒール。
その横に尖った黒い靴が置いてあった。

瞬間やってしまったと血の気が引く。
あの人は私が相手の男と居合わせるのを酷く嫌う。




リビングから出てきた母と目が合った。
きっと目つきが鋭くなった母がそこにはいた。

「なんでそこにいるの、早くどっか消えてよ!」

相手は風呂場にいるようで、母は小声で私に言葉を投げ捨てる。


足早に玄関の扉を開いて、外へ逃げた。

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作者名:みつまめ | 作成日時:2021年8月8日 1時

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