【忍たま】五年生への片思い５つの物語 (ページ8)

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「―――あちゃあ、見ちちゃったのね」
「え！お菊さんお二人のことご存知なんですか！？」

私の話を聞き終わって右手を額に当てて気まずそうな顔をするお菊さんに思わず情けない声で詰め寄る。

「…実はちょっと前から噂になってんだよ」
「や、やっぱり久々知さんにも好意を寄せる方がいらしったんだ…」

そう不思議な話でもない。殿の直接の管理下で動いている忍者隊は自然と側近の方々と顔を合わせることも多いだろう。それに、一般的に見ても久々知さんも年頃だ。そういう相手がいるのも頷ける。しかし、

「はあ、知らなかったとはいえ、相手がいる方をお慕いしていたなんて―――」
「何言ってるの。好意を持っているのは女中の方だけよ」
「え？」
「噂になってるのは女中が忍者隊の若いのに一方的にお熱だって話だよ」
「久々知さんは、」
「その真偽は確かじゃないけど、Aちゃんが思うほど事は進んでいないんじゃない？」
「そうなんでしょうか…」
「くっついたとなったらゴシップ大好きな洗濯長が黙っていないわよ」

噂に疎い私でも洗濯長のおばさんの話は聞いたことがある。なんでも人脈という人脈を駆使して場内の色恋沙汰を網羅しているらしい。勿論、私の気持ちも彼女には筒抜けだろうが、忍者隊が噂に興味が無いことを願うばかりだ。もしもあの方の耳に直接届いていたとしたら恥ずかしすぎるし、届いてたとして少しも反応を見せてくれないのは悲しすぎる。
兎に角、洗濯長と仲の良いお菊さんが違うと言うのだから少なくとも今はまだお二人が互いに想い合っている訳ではないのだろう。

「確かに、それもそうですね」
「それにAちゃんのことは私たちが応援しているんだから、シャキッとしなさいな」

お菊さんの大きな手が労わる様に背中に乗せられ、朝から落ち込んでいた気持ちが少し軽くなるような気がした。厨房係の人たちは皆良い人たちばかりで、たまにからかわれることはあるが、それでも頼もしかった。

「ほら、気持ち切り替えたらちゃっちゃと買い物に行ってきちゃうわよ！ついでに貴女が割っちゃったお皿も買い足しちゃいましょう！」

背中を押された勢いのまま立ち上がり、大きくうなずく。何より仕事に私情を挟んでこれ以上周りの迷惑となるのは避けたかった。なぜ朝早くからお二人が一緒にいたのか、まだ訳は分からないが、一人でうじうじと考えてもしようがない。

お菊さんの背中を追って身支度を整えよう。