【忍たま】五年生への片思い５つの物語 (ページ12)

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まさかその日のうちにお会いできるとは思っていなかった。勿論心の準備などできてはいないが、この幸運を逃すわけにはいかなかった。次いつお渡しできるか分からない。

くるりと引き返して早足になったその足は、しかし、段々と勢いを無くした。

久々知さんは正に今、件のお嬢さんから何かを受け取っている所だった。両手に乗せられたそれと目の前の彼女とを交互に見比べるその目は普段よりも僅かに見開かれており、驚かれていることが伺えた。恥ずかしそうに、愛らしく何かを呟きながら見上げた彼女に促されたのか、久々知さんはそっとその箱を開いた。

思わず「あ」っと声が出る。
箱から出てきたものは私の懐にあるものと瓜二つの香り袋だった。

久々知さんは桜色のそれを丁重に取り出すと、鼻を近づけて息を吸い込んでお嬢さんにやわらかく笑いかけた。
どの道私の懐にあるコレは行き場が無くなってしまったらしい。まさか彼女と同じものをお渡しする訳にもいかない。それに香り袋を選んだのも元はお疲れの久々知さんの助けになりたいという思いからだったのだ。

今のあの方の表情を見れば、私の懸念など不要である。

「それでスゴスゴ帰ってきちゃったの！？」
「…はい、だって同じものもらっても―――」
「馬鹿ね！」

お菊さんは両手に抱えていた湯呑を強く机に叩きつけて憤慨した。

「Aちゃんが久々知くんを想って行動することが大切なんじゃない。例え贈り物が同じだって、AちゃんがAちゃんなりに一生懸命考えて用意したんだもの、久々知くんは喜ぶに決まってるわ！」

私の手を握ってまくし立てるように鼓舞してくださるお菊さん。また私は決断を早まってしまったのかもしれないと思わされた。

「このまま何もせずに終わらせちゃうなんて、過去のAちゃんが可哀想よ。」

しがない厨房係の下っ端にできることなど大してない。しかし自分にできる最大限のことをしようと、そう結論を出した私は、昼食をかき込む様にして食べ、忍者隊の方々が待機する屋敷へと足を急いだ。

初めて近づくそこは静かで何だかものものしい雰囲気だった。時折通りかかる忍者の方々が珍しそうな目でこちらを見てくるのがどこか落ち着かない。それでもあの方を見つけるために廊下の端によって張り込んでいると、突然右肩を軽く叩かれたため驚きのあまり飛び上がってしまった。

「す、すみません、驚かせるつもりは無かったのですが――。Aさん、此処に何か御用ですか？」