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「母さん、話があるんだけど……」
母の百合子譲りの美しい黒髪を、バッサリと短髪にし、行く準備を進める。
もう後は母に話して、許可を得るだけだった。
「……わかったわ」
この髪を見て、何か可笑しいと感じた母は、洗濯物を干す手を止めて家の中へ入った。
「どうしたの」
「母さん。兄さんの遺書は呼んだでしょ」
「……ええ」
「紙に書いてあった鬼殺隊。あれに私は入隊して鬼を狩りたい」
「どうして?」
「え……」
いつもは穏やかでニコニコとしている母が、眉を顰めてこちらを睨んでいた。
その事に戸惑いながら、話を進める。
「わた、私がね、やんないとダメだって、そう思ったから。その、守んなきゃって」
だから、私は行く、と言う前に、母は唾を飛ばす勢いで怒鳴った。
「ダメよ!!」
「……」
向かい合った母はこちらの肩を強く掴んで、揺さぶりながら叱るように言った。
どうして、と細く出たが、そんなのは知らないとでも言うように言葉で押してきた。
「そんなのダメ。絶対よ!!いい!?あの遺書と草太の事は忘れるの!!全部ね!!この家で生き残る為ならそんなの気にしてはダメ!!」
そんなの……?
「大体鬼を狩るだなんて!!そんな野蛮で恐ろしいこと我が子にさせたいと思う親がいると思うの!?あの子はもううちの子じゃないから良いとしてあなたはダメよ!!」
うちの子じゃないって?
「それによく考えて!?あなたは女でその鬼殺隊は男しか入れないわよ!!だって鬼はきっと恐ろしく強いんだもの!!女のあなたが適う相手じゃないでしょう!?そうでしょう!!」
待って、母さん、話を聞いて……。
「ねぇやめてちょうだい!!この家からまた死者を出す気なの!?もう私は懲り懲りなの!!あの人も子供たちも!!」
それだけ言うと、母は倒れた。青白い顔をしていて疲労が溜まっていたのだろう。
薄く小さな身体抱き上げて、部屋の隅へ移動させる。優しく寝転ばすと、襖が開いて、長男の草助が顔を覗かせた。
「よっ」
草助の母、美雪譲りの白髪が揺れる。
「草助さん……」
「兄ちゃんでいいって言ったろ」
「……」
ま、それはいいとして、と間をあけて、百合子をちらりと見た。そして眉を顰めて言う。
「えれー取り乱してたけど、何か言ったのか」
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作者名:ナイトロン | 作成日時:2019年9月3日 23時