夢うつつ (ページ9)

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「あ、丈くん！」
「…ん？どしたん。」

「数学のノート集めててんけど、」

たまたま通りかかった隣のクラスの前
一人教室に残るAを見つけた。

「大橋くんのやつ、数学のノートちゃうねん。」

見せてくれたそれは
明らかに大橋の文字で「英語」と書いてある。

え、どうやったら間違えんねん。
ちょっと無理あるぞ。大橋。

「丈くん、大橋くんと同じ部活やろ？明日ちゃんと数学のノート出すように言ってくれへん？」

「ん。分かった。」

「ありがとう。」

大橋じゃなくて本人に気付かれてる方が
よっぽど良かったのにな。

「…好きや。」
「えっ、？何が？」

目の前にして思わず零れた本音。
ちょうどその瞬間に思い出したのは大橋の言葉やった。

「Aちゃんな、
自分から話しかけんの丈くんだけやねんで。」

気付かれてへんのなら、今はまだこのままでええか。

「さぁ、誰のことでしょう？」

いつも通り笑ってみせる。
その赤くなった頬が俺のせいであることを期待して。