夢うつつ (ページ40)

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「ただいまー！ケーキ買ってきた！」
「おかえり。」

「…なんか良い匂いせん？」

机に並んだご馳走。
こんなに記念日大事にする人なんやなって、初めて知ったし嬉しかった。それを伝えようと合わせた目は、何故か逸らされて。

「…丈くん？」
「はよ、食べるで。」
「うん。」

違和感は今までで1番やった。
初めて見た顔に、心がざわつく。

「丈くん、顔笑ってへんで。」
「…」
「丈くん。」

「…あぁ、もう。まともに飯も食えんし、先言うわ。」

ポケットから取り出されたのは、見た事のある小さな箱。
こんなん、一生で1回しか見れへんやつや。
跪いた丈くんが揺るぎない目でこっちを見る。

「俺と、結婚してくれ。」
「え、」

いつから考えてたん！？という私の問いに、
1か月前…と呟く丈くん。

「じゃあ、服買いに行ったのは？」
「指輪見に行くのに着てった。」
「料理は！？」
「家事は分担がええやろ。」

「じゃあ最近口調優しかったんも？」
「…いつまでも仲良くって、もうええやろ！」

最高や。今この瞬間、世界で1番幸せやと思うくらいに。
で、どうなん？って聞き返す彼に思わず抱きつく。

「もちろん。絶対丈くんと結婚する！」

好きも募れば、愛になる。