夢うつつ (ページ16)

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「めっちゃ良かった。」
「な。Aちゃん誘ってよかったわ。」

映画の感想を話しながら
お昼ご飯を食べて、近くをブラブラ歩いた。
たまたま見つけたCDショップに入って流行りのアーティストのコーナーを見て回ったり。

話せば話すほど好みが似ていることを知った。
思っていたより無邪気なところを知った。
自分が相当惚れていることを、知った。

「今日はありがとう。めっちゃ楽しかった。」
「あのさ、」

空が暗くなるにつれて
蘇ってきた緊張がピークになる。
震える手を抑えるようにぎゅっと拳を握った。

「Aちゃんが好きです。
もし良かったら俺と付き合ってくれませんか。」

笑っていた彼女の顔が固まった。
そのまま赤く染っていく頬。

「え、長尾くん、ほんまに言ってる？」
「本気やで。」
「…夢みたい。」

「…？」
「私、人生の幸運使い果たしたかもしれん。」
「なんで、」
「私も長尾くんのことずっと好き、です。」

赤い顔でお互い見つめ合った後、
笑いがこぼれた。

俺やって、十分幸せ者やわ。

朝は掴めへんかったその手を握った。
見開かれたその目に精一杯の笑顔が映るように。

なぁ、Aちゃん。
これからは俺が有り余るくらいの幸福をあげる。