Ｎのために（安藤望） ページ5
「俺、安藤望」
自信家で誰よりも努力する彼が好きだった
「希望の望、ひじりって書いてのぞみ」
『男の子で望って名前の人に会うの初めてかも』
「あー確かに。俺も会ったことねぇや」
『可愛い名前』
「可愛いか？」
『うん、可愛い』
大好きだった、彼の名前
「――それでそん時助けた奴が同じ野バラ荘でさ。あぁ、野バラ荘っていうのは俺が住んでるボロっボロのアパートなんだけど」
『へぇ』
「杉下、杉下希美っていうんだよそいつ」
俺と同じ名前、そう言った彼にその時はまだそうなんだとしか思わなかった
けれど
――杉下がさ、
その名前が、単語が日に日に彼の口から紡がれることが多くなって
将棋を教えてもらってる？
同じアルバイト始めたの？
一緒に旅行？
なに、それ
いつしか彼女の話をする時の安藤くんはとても優しい瞳をするようになった
それでも私が彼のことを諦められなかったのは、きっと二人が恋人同士ではなかったからだ
付き合った、という言葉は彼からは聞いていない。だからきっと安藤くんの片想い
大学を卒業後、Ｍ商事で上手くやっていることも
野口夫妻の事件後、お子様ランチに付いている旗のようなところに赴任したことも
ちゃんと知っているのに
「――断られた。プロポーズ」
まだ彼の瞳には彼女を映しているなんて馬鹿じゃないか
『そう……』
まだ彼のことを諦められないなんてもっと馬鹿じゃないか
「まぁ突然プロポーズされてもびっくりするよな」
『そう、だね』
「Aはさ、いないの？そういう奴」
『……いないよ』
彼に言って欲しい言葉を簡単に貰える彼女が羨ましくて、憎たらしい
「お前可愛いのに」
『安藤くんがそれ言う？』
「なんで？」
『鈍感』
「はぁ？どういう意味だよ」
『安藤くんには一生わからないよ』
そう言えば腑に落ちないような顔をした彼は、きっと万が一にも目の前の女が自分に好意を寄せているなんて思わないのだろう
『……私だったら、断らないのに』
「え？」
『プロポーズ。だって、安藤くんて結構いい男じゃん？頭いいし運動できるし背も高いし、いい会社入って収入あるし。顔も？かっこいいし？』
「なんでそこ語尾上げんだよ」
『だから、私だったらこんないい男からのプロポーズ、絶対断ったりしない』
「じゃあお前にしとけばよかったな」
肩をすくめてマフラーに口元を埋めた彼に
『ほんとだよ』
私の小さな声は吹いた冷たい風で、彼には届かなかった
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成田(プロフ) - 結衣さん» 初めましてこんばんは。ご指摘ありがとうございます。そうですね！直させていただきました！ (2019年5月28日 21時) (
レス) id: d5fb161253 (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - はじめまして(*^^*) いきなりすみません...。 物語読んでいて気が付いたのですが...。 プリレジェ(京極 竜)のここの部分 目の前に立てばゆっくりの彼女の顔が上がった これ正しくは目の前に立てばゆっくりと彼女の 顔が上がったではないんでしょうか？ (2019年5月28日 16時) (レス) id: fa78cdaff1 (このIDを非表示/違反報告)
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