谷/川安夫(七夕) ページ47
谷川side
7月7日、商店街にある文房具店の軒先に掲げられた笹には近所に住む子供達願い事が毎年ぶら下がっていた
毎年それを横目で見ながら通り過ぎていたけど、今日は今井さんを待っている時間にふと短冊にはどんなことが書いてあるだろうかと見ていた
テストで100点取れますようにとか、足が速くなりますようにとか。小学生らしい願い事に思わず笑みが溢れて
次に目に入ったのは短冊と折り紙の飾りに飾られた奥の奥にあったピンク色の短冊
谷川さんと両想いになれますように
そんな文字が書かれた短冊を見つけてしまった
谷川さん、って文字に一瞬ドキリとした心臓を落ち着かせて。谷川なんて苗字はこの市に何人いると思ってるんだ。いや、この地域にだって何人もきっといる
俺のことじゃない
けれど
気になってしまった気持ちは止めることはできなくて、誰が書いたのだろうかと名前が気になってしまった俺はそっと手を伸ばして短冊の裏をめくった
「…あれ……?」
けれども
何も書かれていなかったそこ
そう、だよな。両想いになんて書いたら自分の名前を書くなんて恥ずかしくてきっとできない。もしかしたら想い人が見る可能性だってあるんだ
ってか、こんな純粋な願い事を卑しい気持ちで名前が知りたくて裏をめくってしまった自分が恥ずかしくて罪悪感が募って来た
もしかしたら小学生の子が一生懸命書いたものかもしれないのに
ごめんね、と心の中でつぶやいて罪滅ぼしも兼ねてその短冊が誰にも見つからないように奥の奥へ隠していれば
『谷川さん?』
耳に響いた高い声
「え、あ、Aちゃん!」
振り返ればAちゃんがいて。あぁ、恥ずかしいところを見られてしまった。人の願いを見るなんて最低だって思われるかもしれない
『何して――…』
すると近付いて来たAちゃんの瞳がだんだんと大きくなって
『なっ、何してるんですかっ!』
勢いよく俺の腕を掴んだ手
「あ、いや……」
『見ました!?見たんですか!?』
「え!あー…うん……わかってる!最低だよね。人の願いを見るなんて……」
『っ……』
「ほんと悪いことしたなって思ってる……って、Aちゃん?」
俯いた顔は真っ赤に染まっていて、どうしたのかと聞こうとすれば俺の頭の中で先程見てしまった短冊の願い事が過ぎる
まさか、Aちゃんが書いた…?
いやいやいや、笹には小学生の願い事ばかりだったし……でもこの反応は……
→
467人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
成田(プロフ) - 夢子さん» 夢子さん、コメントいただけるの本当に嬉しいです!!書く気力が湧き出てきます!ありがとうございます!そして大嶽くん読んでくださって嬉しいお言葉もありがとうございます!中編、近々上げられたらいいなと思っておりますので、その時はまたよろしくお願いします! (2020年8月28日 21時) (レス) id: 5763570508 (このIDを非表示/違反報告)
夢子(プロフ) - 続け様にコメントすみません、大嶽さんなかなか見かけないのですっごく嬉しいです…!いつか出るであろう中編も楽しみです!今回も最高でした〜! (2020年8月28日 16時) (レス) id: 72b9a547c8 (このIDを非表示/違反報告)
成田(プロフ) - 夢子さん» こんにちは!嬉しいお言葉ありがとうございます!きゅんきゅんしていただけたなんて嬉しいです!更新がんばりますのでまた読みに来てくださると嬉しいです! (2020年8月10日 13時) (レス) id: 4c44710d84 (このIDを非表示/違反報告)
夢子(プロフ) - ハグの日とってもときめきました!どのお話もきゅんきゅんしながら読ませていただいてます、更新が楽しみです!! (2020年8月10日 8時) (レス) id: 72b9a547c8 (このIDを非表示/違反報告)
成田(プロフ) - 依織さん» はじめましてこんばんは!柳くん読んでくださったんですね!ありがとうございます!!大嶽さん!!リクエストありがとうございます!また新たな挑戦楽しみです!気長に待っていただけると嬉しいです!そして嬉しいお言葉もありがとうございます! (2020年8月6日 23時) (レス) id: 4c44710d84 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ