▽ ページ45
信虎くんが再び起きたのはお昼近くて。朝食のパンを食べるとお風呂に入った彼は髪を乾かさずに出てきた
『髪乾かさないと風邪引くよ』
「ん、やって」
『自分でやりなよ』
「誕生日だから」
『何その特権』
笑顔でタオルを差し出す信虎くんに、しょうがないなとそれを受け取ってしまった私は自分でも甘いと思う
テーブルの前に座った信虎くんの前に立膝をついてわしゃわしゃと濡れた髪をタオルで拭いて
『特別だからね』
「うん」
誕生日だから、という理由に救われているのは私の方かもしれない
『ドライヤーは自分でしてね』
「Aがやって?」
『えー、もう……』
立ち上がると洗面台からドライヤーを持ってきて、嬉しそうな顔をする信虎くんの髪に温風を当てる
私とは違う髪質
思えば男の人の髪を乾かすのは初めてだ
気持ちよさそうに目を閉じる彼は子供みたいで
『子供みたい』
そう言えば、ドライヤーの音で聞こえなかったのか「ん?」と彼が聞き返す
『なんでもない』
「え?」
『だからなんでもないって』
「聞こえないって」
お互い笑っちゃって
信虎くんの手が私の手に重なるとドライヤーのスイッチを切って
「何?」
『なんでもない』
「気になるじゃん」
『子供みたいって言っただけ』
「子供じゃな――」
彼の言葉を最後まで聞かずに再びドライヤーのスイッチを入れれば、諦めたのかははっと笑った彼に私も笑った
14人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ