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朝方、ガチャガチャと鍵を開ける音がして目が覚めた私は多分信虎くんだと玄関に向かえば、開いた扉から信虎くんが入ってきた
「あれ?A」
『おかえり』
そう言えばふわりと抱きしめられた体に寝惚けていた思考が回復して
『の、信虎くん…!?』
「ただいま。起きてたの?」
『ううん、なんか目が覚めちゃって…』
ドクリドクリと心臓が煩い
そう、彼は酔っ払っているんだ
だからドキドキしないでよと自分に言い聞かせて、離れる気配のない彼の体をトントンと軽く叩いた
『ほら、ここ玄関だから。お水飲む?ね、お水飲も?』
「んー…その前に」
そう言うと私の体を離した信虎くんが、今度は私の頬に触れて
若干潤んだ瞳はドキリと心臓が揺れてしまうほど色っぽくて
「今日俺、誕生日だよ」
そうだ、今日はもう25日になったんだ
『誕生日、おめでとう』
「ん、ありがとう」
嬉しそうに瞳を細める
『ほら、じゃあお水飲もう!ね!』
「んー…」
唇を尖らせて若干不満そうにする信虎くんを無視して歩き出せば付いてきて、冷蔵庫から水を出すとコップに注いで彼に渡した
『これ飲んだら寝なね』
「んー」
『じゃあ私寝るからね』
そう言って先に歩き出せば後ろからお腹に回ってきた手によって抱きしめられた体
「一緒に寝たい…」
『っ…だっ、ダメ!』
酔っ払ってるのはわかっているし、前までなら上手くかわせたのに
――好きだよ――
あの言葉を聞いてからそれがまるで呪文だったかのように私をおかしくさせる
『信虎くんはソファ!ね!』
「えー」
『私はベッド!ね!』
「んー、」
『ほら、離して――…』
「好き……」
『っ……!?』
「Aのことが好き。すっげぇー好き」
私の肩に顔を埋めてそう言った信虎くんの言葉が、やっぱりあの時私の聞き間違いじゃなかったんだと確信に変わってしまう
「A――」
『よ、酔っ払ってる!ね!?』
ドクリドクリ心臓が煩くて
『ほら!ソファ行こう!ソファ!』
誤魔化すように彼を引っ張って
『お、おやすみ!』
何もなかったかのように自分のベッドに入った
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