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部屋に入るとすぐに体温計と毛布を持ってきてソファに座る信虎くんにかける
「うー…だる……」
『大丈夫?』
「へいき、」
そうは言っているけど全然平気そうには見えなくて
ピピッと聞こえた音に体温計を見れば38度7分を表しているそれ
『やっぱり熱あるじゃん!』
「んー……」
『ちょっと待ってて。薬――…あ、でも仕事行くの……?』
「ん、行く」
『無理だよ。熱もあるしこんな時にお酒飲んだら余計具合悪くなっちゃう』
彼に視線を合わせるように屈めば伸びてきた手が私の頬から髪を撫でて
「心配してくれてる」
『当たり前でしょ?』
力なく笑った信虎くん
すると突然聞こえたバイブ音は彼のポケットからで
「もしもし、」
電話に出ると「お前今どこだよ」という声がかすかに聞こえた
「うん、もう行くから大丈夫」
『歩夢くん?』
小さな声で聞けばコクリと頷いた信虎くんに、電話を貸してくれるよう手を出せば素直に渡してくれて
『もしもし歩夢くん?Aです』
《は?》
機嫌の悪そうな声が返ってきた
けれど今はそれどころじゃなくて
『あのね、信虎くん熱があるの。体もすごくダルそうで多分仕事無理なんじゃないかな…本人は行くって言ってるけど』
《は?マジかよ》
『薬も飲ませようと思ったんだけど仕事行くんだったらお酒飲むしと思ってまだ薬飲ませてなくて……』
すると大きく溜息をついた歩夢くんが、裏で誰かと話して
《信虎に伝えておいてくれ。今日は休みでいいから》
『うん、わかった』
《俺もこれから仕事だしアイツ帰っても面倒見る奴いねぇから頼んだぞ》
『え?あ、うん』
《じゃあな》
そう言うと一方的に電話を切られてしまって
体調の悪い信虎くんをそのまま帰すことはするつもりはなかったけど、まさか歩夢くんから頼まれるとは思わなかった
「歩夢、なんだって?」
『今日は仕事休んでいいって。とりあえず薬飲もうか』
「うん、」
コクリと頷いた信虎くんに薬を取りに行った
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