信虎くんに懐かれました (ページ22)

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▽ ページ22

『ねぇ。買い過ぎじゃない？』
「Aお腹空いてるかなーって思って」
『それに……なんでパンとおにぎりばっかなのよ！』

テーブルの上に開けたコンビニ袋からはパンとおにぎりばかりが出てきて

「でもプリンもあるよ！」
『うん、それは嬉しいけども』
「はい」
『どうも』

渡されたパンに、まぁお腹空いてたしいいかと袋を開けた

テレビも付けない部屋で信虎くんとパンを食べているなんてなんだか不思議でおかしな感じだ

この間まで全く知らない人だったのに

今は夕飯を共にしている

『うーん』

ビールを一口飲んで、ビールじゃなくてお茶、いや、もはや牛乳の方がよかったかもなんて思っていれば

ふと信虎くんの視線がテレビ台の横にあって

『あー…あれね、早く捨てないとね』

そこにあったのはあの日買ったシャンパンだった

「なんで？」
『だっていい思い出ないじゃん。信虎くん持って帰る？』

立ち上がってあの日のまま袋から出さずに置いたままのそれをテーブルの上に置く

『あってもしょうがないし。いらないなら捨てる』
「んー…でもさ。これはAが可愛いって気に入って買ったやつなんでしょ？捨てるのは勿体ないし俺も貰えない」

確かに彼の言う通り可愛くて一目惚れしたやつだ

『……じゃあー…飲もうかな』
「うん。いいんじゃん？」
『信虎くんも飲む？』
「飲む」

そう言った彼にシャンパングラスを出して

コルクを開けると響いたいい音に、注がれたピンクはキラキラと光る金粉によって輝いて見えた

『可愛い。綺麗』
「ほんとだね」

これを一緒に飲む相手が信虎くんというのが不思議だけど

「乾杯しよ」
『うん、乾杯』
「かんぱーい」

グラスを軽くあてて一口

『あ…美味しい…』

思っていた以上に美味しかったそれに思わずフッと笑いが出た

結構いい値段したし、と部屋の電気にグラスを照らせばやっぱりキラキラと輝くそれ

「こんなに酒味わって飲んだの初めてかも」
『え？なんで？』
「仕事ではとにかく飲んで稼がないといけないからさ」
『あぁ』

その言葉に信虎くんと初めて会った日を思い出した

きっとかなりの量のお酒を毎日飲んでいるのだろう

「大変だねホストも」
「まぁね。でもホストには夢があるから」
『夢？』
「どんなに家が貧乏でも学歴がなくても実力があれば大金を稼げる。夢があるでしょ？」

そう言って笑った信虎くんに「そうだね」と返した