信虎くんに懐かれました (ページ21)

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それから相変わらず平日の夜に信虎くんは現れて

週末、同期の友達を飲みに誘って彼氏と別れたことを告げた

『浮気してた』

言葉にすれば思い出すのはわかっていたから、泣かないで言えるようになってから言ったつもりだ

私の代わりに怒ってくれた友達に笑うことができて、最終的に全然関係のない話で盛り上がって

こうして嫌だったことは忘れていくんだろうと思った――…

「A！おかえり！」

今日も残業を終えてアパートの前に着けば、いた信虎くん

その言葉も撫でられる頭も

もう定着しつつあるそれに私も変わらず同じ行動を取る

けど、今日は少しだけ違った

「じゃじゃーん！」

何故か笑顔でそう言った彼はパンパンに膨れたコンビニ袋を見せびらかすように上に上げて

「夜ご飯！一緒に食べよ！」

そんなことを言った

『え？』
「だからご飯買ってきたから一緒に食べよ」

何故そんなことを言い出したのかわからなくて

『仕事は？』
「休み」
『……そっか』

でもなんで夕飯？という疑問はきっと食べたかったからなんていう理由のない言葉を返されるだろうと言葉にしなかった

歩き出して鍵穴に鍵を差して

『え、ねぇ、本当に夕飯一緒に食べるの？』
「うん！」

もう一度念の為にとった確認は見事に即答される

『うちで？』
「うん」
『……』

一度鍵穴に入れた鍵をやっぱり抜いて

『ねぇ、一人暮らしの女の家に男を入れるのってどうかと思うんだけど』
「あー…まぁ確かに。でも俺2回目だし」
『まぁ、そうだけど』
「それになんもしないよ？」

純粋な瞳でそんなことを言われたら、逆に私が意識しているみたいじゃないか

『…まぁいっか。何かしたら警察突き出すし』
「なんもしないって」

笑う信虎くんにドアの鍵を開けると

『どうぞ』
「おじゃましまーす」

信虎くんと共に部屋に入った