信虎くんに懐かれました (ページ19)

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何があっても次の日というのは来るもので、いつもの目覚ましアラームを止めるとベッドから起きた

自然とスマホの画面に触れた指は

多分、期待していたんだ

どんな形でも連絡が来ると思っていたから

けど――…

彼からの連絡は一切無くて、終わりを告げられたようだった

『会社、行かなきゃ……』

行きたくない

なんでこんな日にも行かなきゃいけないのか

重い体を動かして鏡に映る顔は酷くて

けれど体が覚えているルーティーンに、支度を終えると部屋の扉を開けた

けど

『あれ……』

開かない扉

力を入れて押せば重くて。何かドアの前にある

『なに、』

両手でグッと力を入れてゆっくりと押せば

「うわっ」

聞こえた声に

『信虎、くん……？』

開いた扉の先には地面に座っていた信虎くんがいて

『なに、してるの…？』
「はよ」

笑顔の彼が私を見上げる

『なんで、ここにいるの？仕事は？』

彼に視線を合わすようにしゃがんで

「終わってから来た。いやぁ寝ちゃった」
『風邪ひくよ！』
「平気だよ」

そう言うと私の目尻にそっと触れた指

「目、腫れちゃってるね」
『っ……昨日は、ごめんね』
「なんで謝ってるの？謝ることしてないでしょ？」
『ううん、迷惑かけた』
「迷惑なんて思ってないよ」

私の髪を撫でた彼がくしゃりと笑う

「これから仕事？」
『うん』
「そっかぁ」

そう言うと伸びをした信虎くん

「今日会えてよかった。夜は会えないからさ」

立ち上がった彼に私も立ち上がって

『これあげる』

鞄から出したのは今朝作ったおにぎりだ

「え？くれんの？」
『うん。迷惑料』
「はは、だから迷惑じゃないって。でもスゲー嬉しい！」

喜ぶ信虎くんに満足して

『じゃあ仕事行くから。じゃあね』
「うん」

歩き出せば「A！」と呼ばれた名前に振り返って

「いってらっしゃい」

笑顔で手を振る彼に

『いって、きます』

そう返して再び歩き出した