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今さっき見たものが信じられなくて
まだ夢を見ているようで
でも脳裏に焼き付いてしまった光景
「A！」
私の名前を呼ぶ声に気付けばもうアパートで、駆け寄って来た信虎くん
「あれ、もしかして今日だった？記念日」
私の手にあるシャンパンの袋を見てそう思ったのだろう
「あー…もしかして今日も仕事遅くなっちゃって会えなかった？」
私が暗い顔をしていたからそう思ったのだろう
「じゃあーまた休みの日にデートするとか？」
ずっと何か我慢していたものが何故か急に溢れ出してきて
「A？」
ポタリポタリと目から零れた雫
「え！？ちょ、どうしたの！？」
慌てる信虎くんの声にそりゃあそうだよねと思ったけど、涙を止めることなんてできなくて
「どうしたの？A？」
心配そうに屈むと私を覗き込むようにして頬の涙を掬う
「なんかあった？」
『っ……』
「俺でよかったら聞くよ？」
『っ……た……』
「ん？」
『…浮気、してた……』
するとハァというため息が聞こえて
宥めるように優しく摩られた背中
『ごめん、いきなり泣かれても困るよね』
「そんなことないよ」
私に触れている手がとても暖かくて優しくて
何やってんだろ、私
こんなの普通に迷惑じゃん
『ごめん、部屋入るね』
信虎くんの横を足早に通り過ぎて部屋の鍵を開けようとすれば掴まれた手
『っ、離して……』
「放っておけない」
『悪いけど一人にして』
そう言えばそっと離れた手に、部屋へ入るとその場に崩れ落ちた
なんで、どうして
ポロポロとこぼれ落ちる涙は止まらなくて
いつから？わからない
私のこと好きじゃなかったの――？
「A……？」
ドアの向こうから聞こえた信虎くんの声
「俺でよかったら――」
『ごめん、帰って』
信虎くんには悪いけど優しくされたいわけじゃない
今はただ――…一人になりたい
「……わかった」
カタリと小さな音が聞こえて消えて行った足音
月明かりだけが差すそこでまた一人涙を流した
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