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月曜日、今日も残業を経て家に帰ればアパートの前に信虎くんがいた
『またいる』
「おかえり!A!」
近付いてきた彼が「お仕事お疲れ様」と私の頭を撫でるからそれを払って
『もう来るのやめたら?鶴の恩返しはおしまいって言ったでしょ?』
「えーだって俺Aに会いたいんだもん」
『私彼氏いるし』
「知ってるよ」
何故彼がここまで私に会いに来るのか
鶴の恩返しと最初は思ったけれど、それだけじゃないみたいで
彼氏がいることはちゃんと言ってるし
まさか、餌付けしたから懐かれた…!?
「なんか安心するんだよねAと一緒にいるの。おにぎり美味かったし」
『え、もしかして実家感…?』
「え?」
首を傾げた信虎くんになんでもないと首を振った
「ねぇ、それ何?」
『あぁ、これ?シャンパン』
信虎くんの視線に今日買ったシャンパンの入った袋を持ち上げて。もうすぐ彼氏と一年の記念日なんだ
『今週彼氏との記念日なんだよね。だからお祝いに』
「ふーんそうなんだ」
『すごく可愛くて一目惚れしちゃってさ。飲むの楽しみなんだー』
「いいね」
『まぁ、平日だしまた残業が長引いちゃったら会えないかもしれないけど』
「大丈夫だよ」
『うん、だといいけど』
少しでも会えたら良しとしよう
『って、信虎くん今日もこれから仕事なんじゃないの?』
「うんそうだよ」
『こんなところで油売ってないで早く行きな』
「えー。まだ平気だし」
『また怒られるよ?』
唇を尖らせる信虎くんに早く行くよう促せば
「ねぇ、あれ言ってよ」
『あれ?』
「いってらっしゃいってやつ」
『?いいけど…』
何故そんなことを言って貰いたいのかわからなかったけど
『いってらっしゃい』
「うん!いってきます!」
そう言った信虎くんは満足そうに私に手を振ると歩き出した
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