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《ごめん》


まただ

また会えなかった

夕飯を一緒に食べようと約束していたのに

また残業で彼氏に会えなかった

スマホの画面に映るのは彼氏からの優しいメッセージで

心底自分が嫌になる



『仕事辞めたいなぁ……』



ポツリと出た言葉にハッとして頭を振って

何考えているんだか

彼氏と会いたいからって仕事を辞めるなんて馬鹿な発言をしてしまった

薄暗い道の中見えて来たアパートに映える赤



「あ!A!」



何故また彼がいるのか

もう来なくていいって言ったのに



「今日もお疲れ様」



屈託のない笑顔でそう言った信虎くんに



『……なんで信虎くんなの』



つい愚痴が零れてしまった



「え?」
『彼氏とご飯行くはずだったのにっ…残業残業って…』
「お疲れ様」
『私は、信虎くんじゃなくて彼氏に会いたいのにっ……』



頭を撫でる手が優しくて、滲んできてしまった視界



「うん、そうだね」
『……ごめん、完全に八つ当たりした』



こんな自分が恥ずかしくて、その手を払うと歩き出す



『もう帰りなよ。っていうか来なくていいって言ったじゃん。毎日来る気?』
「週末は忙しくて会えないからさ」
『平日も来なくていいから』
「俺がAに会いたいの」



またそんなこと言ってるとその言葉を無視して、部屋のドアノブにカギを差せばトンッとドアに着いた信虎くんの手



「そんな顔で帰したくないんだけど」
『……じゃあどんな顔ならいいのよ』
「笑ってる顔」
『今は笑う気になれない』
「んー」



すると何か考えているのかドアに背中を着いた信虎くん



「じゃあさ、今から彼氏のところ行くっていうのは?」
『何言ってるの?もうこんな時間だし約束も断ったし』
「サプライズでさ」
『迷惑じゃん』
「そう?俺だったら好きな子がちょっとでも俺に会いたくて来てくれたらスゲー嬉しいけど」
『…三十分でも?』
「うん」
『十分でも?』
「うん」
『そんなもんなのかな』
「そんなもんだよ」



もし彼氏がそう思ってくれたのなら嬉しいけど……



「それに、俺だったら会いに行く」



見上げれば合った瞳



「その子の仕事が終わるまでずっと待ってる。だって会いてぇし」
『……、優しい、メッセージは来るんだよ』
「うん」
『今度、行ってみようかな』
「うん」



そう言うとくしゃりと私の頭を撫でた信虎くんに、私は自然と笑っていた

▽→←▽



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作者名:成田 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年11月17日 12時

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