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次の日
『嘘でしょ……』
今日の業務は比較的忙しくなくて、これだったら少しの残業で帰れると思っていた
けれど
「すいません!!」
後輩がミスをやらかした
「本当にすいません!」
『いや、大丈夫大丈夫。誰にでもミスはあるから。とりあえず片付けちゃおうか』
申し訳なさそうに謝る後輩に笑顔で言ってはみたものの
これ何時に終わるのというくらいやり直さなきゃならないことがいっぱいで
昨日は信虎くんから貰ったチョコレートが美味し過ぎて残業の疲れも吹っ飛んで今朝は気持ちよく会社に来れたのに
神様はそんなに私が嫌いなのか
そんなに残業させたいのか
パソコンに張り付いて数時間、やっと終わったと時計を見れば23時を過ぎていた
早く帰らないと寝る時間がなくなると急いで帰り支度をして出た会社
電車に乗っている時間も惜しくて、この時間からご飯なんて食べる気にもなれなくて
足早に家へ帰れば、部屋のドアの前にしゃがんでいた赤
『信虎、くん…?』
なんでまた彼がいるのだろうか
この時間にここにいるって、仕事は大丈夫なのだろうか
反応のない彼に近付いてしゃがめば、閉じられた目に規則正しい寝息
『信虎くん!起きて!』
「…ん……んん?A……?」
『ねぇ、仕事は?大丈夫なの?』
「んー、おかえり」
聞いているのか聞いていないのか伸びをした彼が笑顔でそう言う
「今日も残業?お疲れ様」
伸びて来た両手が私の髪を撫でて
『そう残業だったの。今日は遅くて、もう0時になるよ!?』
「あー……やべぇ歩夢に怒られる」
はははと笑う信虎くん
『もう、ちゃんと時間見なよ。それにここに来る必要ないでしょ?』
「Aに会いたかったから」
『だからぁ』
「でも今日はお菓子何もない」
『うん、それでいいって言ったでしょ。ほら、立って』
先に立ち上がると私を見上げただけの信虎くんにため息を吐いて。仕方がないなと手を差し出せば掴んだ彼に思いっきり引いた
『おもっ』
「ははは」
勢いが良すぎたのかよろけた体に転びそうになれば、支えられた腰
「危な」
『じゃあ一人で立ってよ』
笑う彼から離れると
『ほら、早く仕事行きな』
「はーい」
彼の背中を押す
「またね、A」
『もう来なくていいからね』
「またねー」
小さくなっていく背中を見送った
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