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花岡楓士雄 ページ1

ピンクとオレンジが入り混じった空を見上げて、少しだけ痛い体に草の感触が気持ちよかった

今日は駅前に向かう途中、土手沿いで売られた喧嘩は勿論断る理由なんてなくて

振るった拳に勝利を収めた俺の気分はとてもスッキリとしていた

けど


「なーんか忘れてる気ィすんだよなぁ…」


頭のどこかに微かに残る忘れ事。いくら考えてもその正体がなんなのかわからなくて


「なんだったっけ」


空に向かって呟いた


『楓士雄!』
「うおっ!!」


すると急に視界に現れた顔と大きな声に思わず出た声

それは俺の幼なじみで


『もう、何してんのよ。こんなところで』


隣に腰を下ろしたAに体を起こした


「いや喧嘩売られてさ」
『また喧嘩!?ほんっと懲りないわね』
「や、俺が売ったわけじゃねぇよ?」
『はいはい』
「ほんとだって!」
『あっそ』


真っすぐと前を見るAの横顔は何故か怒っていて


「あ、」
『何?』
「約束」
『今思い出したの!?』


ギロリと怖い瞳がこちらを向いた

そう、頭のどこかで忘れていたのは、Aとの約束で

今日はAの誕生日だからと一緒に出掛ける予定だったんだ


「そうだよ!誕生日!」
『最低』
「ごめんて」
『絶対許さない』


そっぽを向いて不貞腐れる顔に、何かないかとポケットを探って辺りを見渡して


「あ、」


見つけた小さな花


「A」
『何』
「ほら」


そう言って目の前に差し出したのは今さっき見つけた小さな花で


『シロツメクサ』
「お、知ってんの?名前」
『知らないの?』
「まぁ見たことはあるけどな」
『あっそ。で、これが何?』
「やるよ。誕生日プレゼント」
『はぁ?』


再び睨まれた


「だから、今日はごめん!本当にごめん!」
『そこの花取っただけじゃん!』
「そうだけど、次!次こそ必ず一緒に誕生日お祝いするから!」


パンッと目の前で両手を合わせて、チラリと片眼をうっすらと開ければ

そっと俺の手からなくなった花


『ほんと、楓士雄ってずるい』
「お、許してくれんの?」
『もう、調子良すぎ。アンタが誕生日空けとけって言ったんじゃん』
「じゃあ、来年も俺の為に空けといてよ。な?」
『っ…この、無自覚男!』


そう言うと立ち上がったAは『バーカ!!』と俺に捨て台詞を吐いて歩き出してしまった


「え…?」


わけがわからなくて、数秒止まった俺は


「ちょ、待てよ!A!!」


その後ろ姿を追いかけた


--------
シロツメクサ=幸運、私を思って、約束

花岡楓士雄→



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成田(プロフ) - evifryさん» こんばんは。コメント嬉し過ぎてニヤニヤが止まりません。ありがとうございます!ビンゾーくん長編も読んでくださっているんですね!嬉しいです!轟くんの長編、そんな嬉しい事言ってくださるなんて…!少し落ち着いたら頑張って続きを考えてみようかなと思います!! (2022年12月12日 23時) (レス) id: 4c44710d84 (このIDを非表示/違反報告)
evifry(プロフ) - コメント失礼します…成田さんの愛されがとっても好きで、ビンゾーくんの長編も更新すごく楽しみにしている者です。轟洋介の長編、是非機会がありましたら公開していただければと思います…!何卒…!何卒よろしくお願いいたします…!!! (2022年12月12日 18時) (レス) @page19 id: 5d6115b8aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:成田 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年9月28日 9時

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