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『生徒会長さんは、どんな花が好きですか……?』
今日もチューリップに視線を落とした彼女が、初めて僕に質問をしてきた
「花は、どんな花でも好きですよ」
なんて曖昧な答えだろうと言ってから気付く
『そ、そうですよね、玄関に飾られているお花もとても綺麗でした。お花が好きなんだなって思いました』
「よく僕が生けたと知っていましたね」
『先生に聞いたんです。そしたら生徒会長さんだって言っていたから……』
「そうですか。それに…僕が生徒会長だって知っていたんですね」
そう言えば驚いた瞳を向けた彼女
『貴方を知らない人なんてこの学園にいないと思います』
彼女の言葉に確かにそうかもしれないと思って
『私なんかがこうして話しているなんて知ったらきっとみんな驚きですね』
「……何故ですか?」
『私……エコノミークラスでもギリギリなんです。だから、そんな私が生徒会長さんとこうして話ているなんて奇跡みたいなものです』
笑う彼女はどこか儚げで、今にも消えてしまいそうに思えた
「……名前」
名前は聞いてもすぐに忘れてしまうから
「貴女の名前を教えて貰えませんか?」
それでも聞きたいと思った名前
『Aです。AAです』
彼女が消えてしまわないように、ずっとずっとその名前を胸に留めておきたいと思った
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