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「生徒会長って浮いた話を聞いたことないわよね」
「誠実なのよ」
「素敵ね。あぁ、会長の想われ人になりたい…」
「まずは名前を覚えてもらわないとよね」
そんな声を耳に訪れたのは学園の裏庭で、もう何も植えられていない土に視線を落とした
――チューリップ!好きなんです…
今でも初めて彼女と会った時のことを思い出す
あれは数か月前、学園の見回りで訪れた裏庭に一人しゃがんでいた生徒がいた
何をしているのかと声をかければ驚いた瞳がこちらを向いて、何かを背に隠した
彼女の背を覗けば土には芽が出ていて
「花、ですか……?」
『っ、チューリップ!好きなんです……』
小さくなる声
『あ、いや、その、すいません……ここ、使われてなかったから…勝手に植えてしまいました…ダメなら他に――』
彼女の隣にしゃがんで
「チューリップですか」
『え…は、はい』
「何色ですか?」
『ぴ、ぴんくです……!』
その少しだけ土から出た芽を自分の瞳に映した
『赤とか白って学校とかでよく見てたから、ピンクのチューリップを見たくて……すいません』
「何故謝ってるんですか?ここは元々使われてなかった場所ですし、誰が使おうが文句なんて言われないでしょう」
『じゃあ…使ってていいんですか……?』
「えぇ、構いませんよ」
それだけ言って立ち上がって、歩き出そうとすれば
『あの、あ、ありがとうございます……!!』
深く深く頭を下げた彼女
「キミは――」
名前も顔も知らない生徒だ
雰囲気からして多分エコノミークラスで
多分名前を聞いてもすぐにわすれてしまうだろう
だから、聞くのをやめた
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