▽ side you ページ26
Aside
「あらあら、A様。どうされたのですか突然」
次の日、何も連絡もせずに訪れた綾小路家
調理場に行けば驚いた顔をした美津子さんが割烹着を結びながらやってきて
『料理を作りに来ました』
今度は違う、髪を結んで割烹着を着て調理台の前に立った
『突然ごめんなさい。でもどうしてももう一度作りたくて』
「さようですか。では葵様に――」
『言わなくていいわ。彼は知らないの。ただ私が作りたいだけで来たのよ』
あれからやっぱり嫌な気持ちは全然晴れなくて、誰にも何も言わずにここへ来たのだ
『昨日見たと思うけど料理なんて全くやったことがないの。だから一から全て教えてほしいのだけれど』
そう言えば驚いたような顔をした美津子さんは、次に笑顔になると「かしこまりました」とただそう言った
それから本当に一から、お米の炊き方や野菜の切り方を教わって
「A様、持ち方はこうです」
『こう？』
「そうです」
ぎこちない手付きで彼女の真似をして野菜に包丁を入れる
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
『えぇ』
丁寧にゆっくりと一つずつ作業をこなして
「味付けは薄味で」
彼女の言う通りに調味料を入れてできた料理
何時間かかったかわからない
『できた……』
お皿に盛りつけて一息吐けば腰の痛さと疲れがどっと来た
「お疲れ様です」
『えぇ、ありがとう。お料理って、とっても大変なのね』
「そうですね。でも愛情があれば何のことはないですよ」
そう言った美津子さんに首を傾げれば笑った彼女
「ささ、葵様にお届けしましょう」
『いいえ私はいいわ』
「どうしてですか？」
『さっきも言ったけど彼は何も知らないし言うつもりもないの。ただの自己満足だから』
「でも――」
『私が作ったことは言わなくていいわ。いつも通り出して頂戴。ただ、もし聞けたらでいいんだけど彼がこれを食べてどんな感想を述べたか知りたいわ』
「かしこまりました」
深々と頭を下げた美津子さんに
『今日はありがとう。とても勉強になったわ』
割烹着を脱いで鞄を持つと来た時と同じようにそっと彼の家を後にした
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
成田(プロフ) - はいこさん» あぁぁ…コメントありがとうございます！お返事遅くなってしまいすいません！！嬉しいお言葉ありがとうございます！すごく嬉しいです！だんだん甘くなっていければなと思っておりますので、楽しみにしていただけたらなと思います！ (2020年3月23日 23時) (
レス) id: d5fb161253 (このIDを非表示/違反報告)
はいこ(プロフ) - 評価1回しか押せないのがつらいです(笑) (2020年2月27日 13時) (レス) id: 0b03ce975a (このIDを非表示/違反報告)
はいこ(プロフ) - 初めまして。毎日更新楽しみにしています! 他の作品は原作沿いが多いので、こういった会長とのお話が読めて嬉しいです…! 失敗したお料理を食べてくれる会長にきゅんとしました… これからの展開が楽しみです。応援してます。頑張って下さい! (2020年2月27日 12時) (レス) id: 0b03ce975a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
