妹が好きで何が悪い【プリレジェ】

▽ ページ32

部活動は強制的ではないけれど、こんなすごい学校に通わせてもらっているのだからせっかくだし何かやってみたかった

華道に茶道、弓道、テニス。体験できるものはしてみようと放課後は部活体験に勤しんでいた

そして今日は将棋部を体験してきた帰りだった

いつもより静かな廊下でふと聞こえた音

それは多分ピアノで、誰かが弾いているのだろう

ゆったりと心に響くようなその音色に少しだけ興味を持った私はその音に惹かれるがまま歩みを進めた

一体どんなお嬢様が弾いているのだろうと、だんだんと大きくなる音は一つの教室からで

少しだけ見るつもりで覗いてみれば、そこには朱雀奏さんがいた

優雅にピアノを弾く姿はまさにお坊ちゃま、いや王子様で

いつの間にか聞き惚れていた自分にハッとした

あれから彼とは会う機会がなく、クラスメイトから放課後訪ねて来ていたというのを何回か聞いた

もしかしたらまた送ってくれようとしていたのかもしれないが、部活の体験だったし悪いのでこれでいいんだ

するといきなり聞こえていた音が止まって、何かと見れば瞳が重なって

盗み見ていたのも、放課後訪ねて来てくれていたこともなんだか気まずくて去ろうとした


「っ、待って！！」


けれど、ガタンと音がして立ち上がった奏さんが大きな声でそう言ったものだから、私の足は止まってしまって


「待って、行かないで」


ゆっくりと近づいてきた彼は私の目の前まで来るとそっと手を取った


「ピアノ、興味ある？」
『あ、いや、その』
「おいで」


なんて応えていいかわからない私にフッと笑うと引かれた手に自然と足が動いて

何故かピアノの前の椅子に座らせられると、右手が鍵盤に触れた


『あ、私、弾けないんで』
「大丈夫だから」


そっと上から重なった奏さんの手にドキリと心臓が揺れて

静かな教室に綺麗な音が響いた

▽→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す