女王蜂

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高層マンションに住んでいる、と言われて大多数の人が想像するのはお金持ちである、稼ぎのある人である、という事だとおもう。

私の場合、前者は正解であり、後者は不正解だ。
稼ぎはない、しかし金はある。
イコール、実家が一般でいうところのお金持ちだというのが本当の所だった。







私が働かなくても、暮らしていけるほどのね。







だけど、目の前に浮かぶそのいかにもお高そうなマンションは、完全に彼の努力の結晶だと思うと、素直に住む世界が違うのだと思ってしまう。

物理的な建物の高さはもちろん、お金の高さだって相当だと思う。それを全て、自分の手で手にしているというのだから。









エレベーターに乗り込み、56のボタンを押し込む。
開いたドアの先、彼の部屋のドアの前、少しだけため息をついてインターフォンを押した。







返ってこない声の代わりに、ガチャってドアの開く音がした。
頭がまわる前に手が捕まれて、中に引き込まれる。

...いつもそうだ。
彼が私を呼ぶときは。






『...も、なに...もうちょっと落ち着い、』

慧｢遅い、すげー待った、大分待たされたんだけど。｣






身動きが取れないほどに後頭部に手が添えられる。
抵抗出来ないまま、何度も重ねられるそれに応えた。




嫌がるフリ。抵抗するフリ。
彼がそれを好きなことももう、何となくわかってた。

慧くんにとって、私が演技をしてるかなんてどうでもいい事なんだろう。
あるいは、未だにそれがバレていないのかは判断がつかないけれど。






『やだ、待って汗かいてる』

慧｢無理だって、もうさ、｣







私達以外、誰も知らないこの関係。
いつか終止符が訪れることをお互いに望みながら、また欲望のままにその熱に手を伸ばした。

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