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その日は、私が1歳の誕生日を迎えて二ヶ月ほど経った頃だった。
我が土御門家に、ゴキブリがでた。
私の寝るベットの真上の天井に現れたのだ。
私とゴキブリの目があった(ような気がした)。
その直後、あろうことかそのゴキブリは着地したのだ。
私の、真っ白なすべすべの額に。
「ーーーーー！！！！！
ふぅぇぇえぇぇん！！！うぇぇえん！！！」
私のいる場所を中心にベット家のガラスがばりんと弾け飛び、障子が爆発するかのように弾ける。
襖も勢いよく飛ぶ。
なのに、ゴキブリは飛ばない。
わたしが泣き叫べば、叫ぶほど家具や調度品が破壊されていく。
そしてついに、額の上のゴキブリが宙に浮き、独りでに燃え出した。
父「真緒！！！大丈ーーーーー燃えている…」
祖父「おやおや…苦手じゃったのか…」
必死の形相で駆けつけた父と、にやにやと笑っているように見えるお爺さん。
母は体調が悪く、病院に行っている時だった。
父「真緒、ごめんね、気付かなかったよ、
もう大丈夫だから、落ち着くんだ、ね、大丈夫だから」
燃やしたゴキブリを素早く処理した父がどっちが
大丈夫かわからないほど動揺した様子で私を抱きしめる。
もう大丈夫なのはよく分かっていた。
問題はにやついているお爺さんだ。
祖父「鷹守、真緒を暫く預かりたい。今回はゴキブリ騒ぎじゃったが、今後この子の力が本当に暴走した時にこれじゃあ済まんこともあるじゃろう」
確かに、私は癇癪のない赤ん坊だった。
感情が爆発したのはこのゴキブリ騒動以外にない。
食事も、トイレも、眠い時も、少しぐずってアピールをするくらいで、今まで怒りも不快感もこんなに感じたことはない。
迂闊だったーーーーーしかし、こんなこと絶対に予想なんてできない。
前世からどうしても無理だった。
ゴキブリだけは。
父「分かった…リリアにも、話しておくよ…」
私を力強く抱きしめながら父は渋々了承した。
＊
程なくして、私は一日の半分ほどを祖父の元で過ごすこととなった。
祖父「さて真緒や、君は…そうじゃな、もう言葉は喋れるんじゃなかろうか」
開口一番、柔和な笑顔と共に私を真っ直ぐ見つめながら祖父は言った。
赤ん坊の演技に疲れてきていた私は、素直に答えることにした。
「おじいさまは、いつから、きづいてたの？」
日本語を発するのが久々すぎて、思ったより話すって難しいなと感じながら。
祖父「寝言じゃ。
ーーーーゆうと、私を置いていかないで」
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作者名：M.S | 作成日時：2019年5月11日 16時
