My Days in Hospital [Storm]

2 ページ41

side A


「ねぇ、まーぁ、ぴえろのおじさんまだぁー？」



こうくんが、俺の白衣を引っ張って聞いたきた。

これで5回目...笑
俺だけじゃない、病棟内のほぼ全体の子供たちがスタッフたちにそう尋ねてる。


「もう少しもう少し、あの長い針が12のところに来たら、ピエロさん来るからねー！」



ピエロさんというのは週1回、病棟にきて子供たちを元気づけてくれるクリニクラウンのスタッフさんのこと。

これを導入したのは4年前。


今の院長が就任したとき。
病院にいる子供たちにも遊ぶ楽しさを知ってほしい、病院という空間にいることを少しでも忘れる時間を作ってあげたいと提案したらしい。



それから2人のクラウンさんが定期的に病棟に来て、病棟の子供たちにパフォーマンスを見せたり、一緒に遊んだりとするようになった。


最初はピエロの化粧や衣装に驚いて怖いーって泣く子も多かったんだけど今じゃこの通り。


来る日になればまだかまだかとはやし立てるまでに人気者。
実はクリニクラウンはAもすごく楽しみにしてるんだ。



親から愛情を注がれずに育ったAはここに来た頃は初めは少し笑ってくれたものの、いつものように何事にも無関心で表情を豊かにすることはなかった。


珍しくおーちゃんも手古摺るくらい。



何をするにも泣いて、そして何かをしてあげようとすれば暴力を振るわれると思ったのか自分で自分の身を守りながら抵抗したり震えたり...
Aをはじめとした虐待を受けて命の危機にさらされた子は今まで何人か目にすることはあったけど、中でもAは最年少で症状も1番俺が見てきた中ではひどかった。


だけどクリニクラウンが初めてAとふれあったとき、最初は警戒心丸出しで抵抗してばかりだったけど徐々に心を開き、初めてにもかかわらず、少し笑ってくれた。



それも心から。


これには皆驚いていた。

それからというものAはクリニクラウンが訪れる日を首を長くして待ってる。



今日も来る日だから一応のために車椅子を持って病室に向かう。

Aも基本は、病棟のすぐ扉の前で待ってるから。





でも今日は体調がすぐれないみたいで熱がある。


しょうがないけど、早く治すために今日はプレイルームには行けなさそうだ。
ゆっくりしてようね？って言って聞かせたけど、悲しそうな顔をするA。



　
そりゃ折角楽しみにしてたことを我慢しなさいって言われたらへこむも同然だよね...。



何かいい方法ないかなぁ...

3→←楽しいひととき-1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す