意地悪と優しさ ページ7
唇をゆっくりと離すと、サクライは驚いて目をしばたかせていた。
「私はサクライに会って幸せを知った。だから...そんなこと言っちゃだめだよ」
サクライを真正面から抱き締める。
真夏なのに汗ひとつかいていない冷えた体。
温めるようにぎゅっと腕に力を入れると、肩に額を乗せたサクライ。
「A......」
掠れた呟き声。
「...俺、やっぱお前が好きだわ。初めてかもしんねぇ。本気で誰かを好きになったの」
がっしりした腕が背中に回される。
そして優しく抱き締められた。
「...私も初めて」
顔を上げたサクライと視線が交錯した。
そしてもう一度唇を覆われる。
離れては引き合い、引き合っては離れ。
今までで一番温かかった。
「...サクライ、好きだよ」
無意識にこぼれ落ちた本音。
するとサクライは「知ってるよ」耳元で囁いた。
「自分からキスするほど俺のこと、好きなんだもんな」
熱い吐息が耳にかかり、かーっと顔が熱くなった。
「馬鹿ッ！もうっ。サクライの馬鹿！馬鹿野郎！」
拳でどんどんと胸を叩くと手首をきゅっと握られた。
「おいおい。俺にそんなこと言っていいと思ってんのか？」
「...知らないもん」
優しいけど、ときどき底意地が悪くなるのもサクライだ。
そして、そんな意地悪も嫌いじゃない。
「じゃあみっちり教えてやるよ」
「えっ」
腰に手を回され、後頭部をがしっとつかまれる。
「いや、遠慮します...」
目を泳がせると、そんな様子を楽しむようににやりと笑うサクライ。
「遠慮すんなよ。本当は期待してるくせに」
「そ＿＿＿」
言い訳する間もなく、唇を押し付けられた。
熱い舌が口の中に滑り込んできたので、私も応える。
辿々しく舌を絡ませようとする私に対し、サクライは慣れたように時折動きを止める。
それが悔しくて上手に動かそうとすると、サクライが笑うのが唇の動きで判った。
「サクライって意地が悪いよね」
唇が離れてから顔を背けてそう言うと、くくっと馬鹿にするように笑われた。
「いや、頑張ってんなーって思って」
図星でなにも言い返せない私を見て、またも満足そうに笑う。
「....ほんっと性格悪い」
捨て台詞を吐き、着替えを持ってお風呂に向かおうとした。
すると後ろからサクライが「ゆっくり入ってこいよ」
「...うん」
さっきまでの得意気な様子と変わって優しいサクライ。
だから嫌いになれないのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黄昏水晶 - もえさん：ありがとうございます！率直にそう言ってもらえると嬉しいです。 (2015年8月2日 12時) (
レス) id: b5cdbd3ae8 (このIDを非表示/違反報告)
もえ - うぉぉぉぉぉ！！！！！面白いーw (2015年8月1日 2時) (レス) id: f4a5ca3939 (このIDを非表示/違反報告)
黄昏水晶 - 杏仁どーふさん:ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします。 (2015年4月1日 16時) (レス) id: b5cdbd3ae8 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁どーふ(プロフ) - 続編おめでとうございます(*^^*)応援してます♪ (2015年3月30日 22時) (レス) id: e8420b0568 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黄昏水晶 | 作成日時：2015年3月27日 11時
