美しき女将 ページ28
私たちは部屋に荷物を置いた後で温泉や食堂などの施設を一通り案内され、再び部屋に戻ってきた。
「では、これで宿の説明の方は終わらせていただきます。なにかございましたら受付の方にお申し付けください」
そう言って踵を返そうとしたが、何かに気づいたようにあっと小さく声をあげるとまた私たちの方に向き直った。
「申し遅れました。わたくし、この『星宵の宿』で女将をしております、東雲 美月(シノノメ ミツキ)と申します」
袖の裾からメモとペンを取り出して「東雲 美月」と整った字で書く。
「そして娘が月葉(ツキハ)と美琴(ミコト)です。旅館の手伝いをするように言いつけてはいるのですがなかなか言うことを聞いてくれません。櫻井様はよくご存知でしょうけど」
ふふっとサクライに向けて笑う美月さんの笑顔はドキドキするなんてものではなく、美しすぎて崇拝したくなるくらいだった。
それなのにサクライは顔色ひとつ変えずに「ええ、まあ…」なんて気の抜けた返事をしているんだから信じられない
「いつ顔を出すか分かりませんけど会ったらどうぞ仲良くしてやってください」
軽く頭を下げて去っていった美月さんの残り香がふっと鼻を抜ける。
「きれいな人…」
ぽーっと彼女の後ろ姿に見とれていたが、頭を小突かれて現実に戻された。
「なにさっきからじろじろ見てんだ。俺が恥ずかしい」
サクライに冷めた目で見下ろされる。
あんなにきれいでしなやかで品のある女性を目の前にしてなにも思わないなんてサクライは本当に男なのかしら、と少し疑っていると、突然聞こえるオオノの笑い声。
「憧れるんじゃない？でもAちゃんはあんな風にはなれっこないよ！美月さんが出すオトナの色気がAちゃんからも出てるって考えたら笑っちゃうもん」
けたけたと笑うオオノに毒されたのか、私の色気溢れる姿を想像したのか、どちらか分からないが___きっとどちらもだろうが___松本まで笑いをこらえている。
恥をかかされた私はかーっと顔が熱くなって、そばにあったスリッパで思わず頭をすこーん！
「なによ、二人して笑い者にして！大人になったら色気溢れる美女になってあんたたちを誘惑してやるんだから！」
「ユーワク？無理無理、諦めなって____いでっ」
「オオノなんか嫌い！ついでに松本も嫌い！」
「なんだよついでって！」
結局のところ騒ぐ私たち三人をため息をつきながらやり過ごすサクライが一番オトナなのだった。
続く
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黄昏水晶 - もえさん：ありがとうございます！率直にそう言ってもらえると嬉しいです。 (2015年8月2日 12時) (
レス) id: b5cdbd3ae8 (このIDを非表示/違反報告)
もえ - うぉぉぉぉぉ！！！！！面白いーw (2015年8月1日 2時) (レス) id: f4a5ca3939 (このIDを非表示/違反報告)
黄昏水晶 - 杏仁どーふさん:ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします。 (2015年4月1日 16時) (レス) id: b5cdbd3ae8 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁どーふ(プロフ) - 続編おめでとうございます(*^^*)応援してます♪ (2015年3月30日 22時) (レス) id: e8420b0568 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黄昏水晶 | 作成日時：2015年3月27日 11時
