海へ向かって ページ21
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光陰矢のごとし、とよく言うが、昔の人は上手いことを言ったもんだ。
一昨日は「早く明日がなくなって明後日がくればいいのに！」と思っていたが、二日後なんてあっという間だった。
＿＿＿そう、時は満ちたのだ。
時刻は午前四時半。まだ蝉も起きていない早朝。
私は大きなスーツケースを引いてアパートの駐車場にいた。
隣のサクライは腕時計をしきりに気にしている。
松本はスーツケースに軽く腰掛け、眠たそうに大欠伸をする。
その数分後、一台のタクシーが駐車場に滑り込んできた。
後部座席から降りてきたのはアロハシャツ。
「ごめーん。遅刻？」
オオノがへらへらと笑いながら私たち三人のところへ来る。
「いや、大丈夫。これで全員揃ったな」
サクライが私、松本、オオノの順に顔を見て言う。
＿＿＿もう一度言うが、時は満ちたのだ。
「行こう、サクライ。南の島へ！」
私が天に向かって叫ぶと、オオノが「オーッ！」と雄叫びをあげた。
「お前ら、近所迷惑」
寝起きで不機嫌そうな松本なんて気にしない。
私は昨日八時に寝てフル充電してきたのだ。
＿＿＿松本は深夜の接客で寝不足らしい。
私たちはサクライの愛車＿＿黄緑色のポルテの後ろに荷物を積み、車に乗り込んだ。
助手席に乗り込んだ私はシートベルトを閉め、ドライバーのサクライは眠気覚ましのコーヒーを飲む。
「サクライ。安全運転ね」
私の一言を掛け声に、四人を乗せた中古車は船着き場へ向けてのろのろと発進した。
今日でサクライの車に乗るのは三度目だ。
まず家から連れ去られたとき。二度目はその後日の荷物の受け渡しのとき。
そして今日。
私が十数年間乗せられてきた車よりは乗り心地が悪い。
だが、不自然に沈み込む座席で音もなく走る高級車より、体がぼんぼん跳ねて大きな音の割にはちっともスピードの速くない中古車のほうが私は好きだ。
それに小さくて少し汚れていて、でも大事に手入れされている車のほうが愛嬌がある。
それに比べ、車庫に行儀良く整列して異様な光沢を放つ真っ黒い外車の数々。
それを見る度に私はカブト虫の羽を思いだし、そのボディをへこませたくなったものだ。
私がそんなことを思い起こしていると、車は都市部を抜けて沿岸へ出た。
思わず助手席で身を乗りだし、堤防を越えるように首を伸ばす。
「海だああぁぁぁッ！」
堤防の向こうに広がるのは、まさしく青い青い海だった。
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黄昏水晶 - もえさん：ありがとうございます！率直にそう言ってもらえると嬉しいです。 (2015年8月2日 12時) (
レス) id: b5cdbd3ae8 (このIDを非表示/違反報告)
もえ - うぉぉぉぉぉ！！！！！面白いーw (2015年8月1日 2時) (レス) id: f4a5ca3939 (このIDを非表示/違反報告)
黄昏水晶 - 杏仁どーふさん:ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします。 (2015年4月1日 16時) (レス) id: b5cdbd3ae8 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁どーふ(プロフ) - 続編おめでとうございます(*^^*)応援してます♪ (2015年3月30日 22時) (レス) id: e8420b0568 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黄昏水晶 | 作成日時：2015年3月27日 11時
