心からの謝罪 ページ20
「あ、あのー、Aちゃん？」
床に正座したオオノが声を強張らせながら呼びかける。
「なに」
ソファで脚を組みながら睨みつけると、しゅんと項垂れるオオノ。
「あのー、そのー、昨日は、ごめん」
何も言わずに見下ろす私を捨てられた子犬のような眼差しで見つめてくる。
「もうしないからぁ！お願い。許して！許してください、A様ぁ！」
そう叫ぶとプライドも見栄も捨ててオオノは土下座してきた。
十分反省しているようだが、私はまだ腹の虫が治まらないのでもう一歩追い詰める。
「私はオオノの弱味を握ってるんだよ？」
そう、今まで計二回ほど私に悪さをしたオオノ。
過ぎたことを蒸し返すような卑怯な真似はしたくないが、もしもサクライに告げ口したならば。
まさか一週間以上前のことを怒るはずはないだろうが、オオノは要警戒人物として扱われるに違いない。
「判ってます！だから、お願いだから許してくださいぃぃぃ」
情けない声を出して許しを乞う彼を、私は許してやることにした。
「その代わり、もしも今度私を馬鹿にするようなことがあったら＿＿＿」
「判ってる！翔ちゃんに言って怒ってもらうんでしょ？」
「ううん。私があんたをぶん殴る」
わかってるわかってるー、と言う彼は恐らく何も判ってない。
だがこの男とまともに喧嘩をしていたら時間を捨てるようなことになるので追及するのはやめておいた。
「にしても暑いねー、この部屋」
すっかり開き直ったオオノが手で顔をパタパタと扇ぎながら言う。
「文句があるなら自分の家で涼めば？」
だが、オオノの指摘はもっともだ。
気温が三十五度を越えようかというこの頃になっても、サクライはクーラーをつけない。
サクライは家計が苦しいからと言っているが、実は単にクーラーが壊れているだけではないかと私は密かに疑っている。
この安いボロアパートのことだ、クーラーが壊れていてもなんの不思議もない。
「こんな暑いなか耐えられる翔ちゃんとAちゃんはすごいよ。熱中症にならないのがおかしいくらい」
＿＿＿昨日あんたが帰った後になったんだよ！
心の中で突っ込むが、もちろんオオノには聞こえない。
せめてもの救いは、夜は山からの風が案外涼しいことくらいだ。
「Aちゃんも気をつけてねー、倒れないように」
他人事のように言う彼は、他人の家の冷蔵庫から勝手にビールを取り出すのだった。
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黄昏水晶 - もえさん：ありがとうございます！率直にそう言ってもらえると嬉しいです。 (2015年8月2日 12時) (
レス) id: b5cdbd3ae8 (このIDを非表示/違反報告)
もえ - うぉぉぉぉぉ！！！！！面白いーw (2015年8月1日 2時) (レス) id: f4a5ca3939 (このIDを非表示/違反報告)
黄昏水晶 - 杏仁どーふさん:ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします。 (2015年4月1日 16時) (レス) id: b5cdbd3ae8 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁どーふ(プロフ) - 続編おめでとうございます(*^^*)応援してます♪ (2015年3月30日 22時) (レス) id: e8420b0568 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黄昏水晶 | 作成日時：2015年3月27日 11時
