【ヒロアカ】ドラゴンな女子高生 3 (ページ6)

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第96話飛べるページ6

『すごいな、君は』

「あ゛？何笑っとんだ！」

驚いたAの顔は、すぐに笑みに変わった。
ほぼ呆れに近い顔だった。

(…こういうとこは、敵わないな)

そう思いつつも、言い出そうとはしなかった。
中庭(ここ)で話す気にはどうしてもなれなかったから。

せっかく、飛べるようになったんだ。

顕現していた蒼色の翼を羽ばたかせる。
波紋状の風が吹き、窓が僅かにカタカタと鳴った。
そして、足が地面から離れる。

(あぁ……)

懐かしい感覚。
だが以前のような恐怖はない。
自分の一部として、よく馴染んでいる。

そして、爆豪君に手を差し伸べた。

「てめェ…」

どういう意味だと言わんばかりの顔。
いつも寝るのが早い人がここに来た理由を考えたら、眠れないんだろう。彼も分かっているはずだ。

『気分転換』

もう片方の手で上を指す。
寮の中庭は突き抜けていて、空と繋がっていた。

「ンなもん爆破でいけるわ！」

キレながら、手で爆破を繰り返す。
プライド的に、頼るのが許せないんだろう。
でも、付き合ってくれるらしい。

『いいから』

爆豪君の手首を掴む。
振り払われる前に、私は飛翔した。

重力を感じたのは一瞬。
次の景色は、遠くに見える夜景だった。
山頂に立つ雄英から見える景色は綺麗だ。

『………』

それに見蕩れていたA。
静けさが心地よかった。

「…オイ、離せや」

しかし、ドスの効いた声にハッとする。
下を見ると、爆豪がこちらを睨みつけていた。

『すまない』

ここで手を離すと、落下してしまう。
彼なら着地も容易いだろうが、ここまで連れてきたのは自分だ。
ゆっくりと下降し、寮の屋根に下ろした。

爆豪君が着地したのを見て、私も隣に着く。

『さっきの話の続きだけど…』

視線だけがこちらに向く。
また見透かされそうで、それを逸らすように座り込んだ。

色々、考えた。
中庭で個性を発動していたのは、久々だったから。
でも自然と落ち着くことができたんだ。

サーの死はショックだった。
でも、弟子である通形先輩が頑張ろうとしているのに、私が悲しんでいてはいられない。

「強く生きて欲しい」

あの言葉を、受け止められなければいけない。
だから、ちゃんと踏ん切りはついた。
ただ………

『ごめんね、わたしはまだそっちにはいけない』

緑谷君とエリちゃんを前にして、現れた小さな女の子は＿＿＿＿＿

＿＿＿幼い頃の私だった。