【歌い手】空白のページを君と僕で Ver.B【超大型企画】 (ページ4)

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＊ページ4

「新郎そらる。貴方は、病める時も健やかなる時も、新婦Aを愛する事を誓いますか？」
「……はい、誓います」

キラキラと輝くステンドグラス。大勢の参列者。溢れんばかりの花々。

そして何よりも、真白のエンパイアを身に纏い、真直に前だけを見詰めるAが隣に立っている。

***

あの時、Aの引いた弾丸は、俺の後ろでナイフを振り上げていた元老を貫いた。彼女と同じ色に染まる老人を冷めた目で見ながら、口を開く。

「どう足掻いても、赤と青が分かり合う事は不可能。なら、混ざり合って仕舞えば良い」
「……は、？」

あまりにも突拍子のない提案に、思わず間抜けな声が漏れた。何を言っているんだ、こいつは。

「幸いにも、私と貴方は愛し合っている。何も問題は無いわ。政略結婚といきましょう？」
「いや、待て。わりと問題しか無いけど？」

その夜は朝日が昇るのも、彼女の行動も速かった。速い、なんてもんじゃなかった。

次の日には、俺とAの結婚報道が両国間で広まり、上へ下への大騒ぎ。そりゃそうだ。何の前触れも無かったのだから。

両国の話し合いも、俺達の結婚式の予定も、何もかもがあっという間に過ぎ去り、今日という晴れの日を迎えたのだ。

***

「新婦A。貴女は、病める時も健やかなる時も、新郎そらるを愛する事を誓いますか？」
「……いいえ」
「……は、？」

彼女の突拍子のない言葉に、思わず間抜けな音を立てるのは、これで何回目か。少なくとも、俺の両手の指では足りない。

くるり。華麗なターンを決め、不満気な表情の参列者達を見下ろす。不敵な笑みに、目を惹かれた。

「私がAであり続ける限り、そらるさんだけを愛し抜く事を宣言致します」

これは、唯の誓いではない。宣戦布告だ。

これから先、多くの提言という名の文句が押し寄せてくるだろう。その全てを跳ね除け、赤も青も関係ない国にすると、彼女は神の前で誓ったのだ。

なんだ、それ。格好良すぎるだろ。

Aの宣誓に答えるかのように、群衆に見せ付けながら誓いのキスを施す。幸せと、固い決意の味がした。

***

一つの赤と一つの青がもたらした醜い諍いは、永遠に埋まらない溝のように思われた。

しかし終焉も、一つの赤と一つの青がもたらした。

愛し合うふたりがこれから先、美しい縁(ゆかり)を紡いでいくのだろう。

***