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【そらる】赤青の果てに。/白椛 ページ1

ガラリ……ゴロリ……


黄金の瞳が妖しく輝き、幾対もの小さな眼が瞬きを始める。空を黒が支配し、重厚な門扉が閉じたその外で、重い鐘が音を立てる。


闇夜に紛れて、赤い影が蠢く。血潮で染め上げたかのような真っ赤なマントを翻し、猟銃を片手に風を切る。


赤に触発されたかのように、木々の間から青い眼が光る。森を、大地を、空を、全てを支配するかのように、声を轟かせる。



「さあ、オオカミ狩りを始めよう」
「さあ、赤ずきんを呑み込んでしまえ」




***




赤ずきんオオカミ



国民からの信頼を一心に受け、国防の全てを取り仕切る一族。通称、赤ずきんの一族。


無法地帯だった森林部を支配する王であり、神である一族。通称、オオカミの一族。


幼気(いたいけ)な少女を狼が呑み込んだあの日から、早数百年。

両一族の仲が修復する兆しは無く、寧ろ悪化し、年月を重ねる毎に酷くなる一方である。




***




事ある毎に難癖を付け合い、小競り合いを飽きもせずに続ける馬鹿共には毎度呆れを通り越して、溜息も出てこない。


俺は元来、争いを好まない性だ。だが、子が親を選べないのと同様に、俺も生まれてくる血筋を選べなかった。

なりたくもない"王"の称号を押し付けられ、如何にして赤ずきんを呑み込むかばかりを考える偏屈共の相手をする。



「今日も、空は広いな……」



そんな息苦しい空間に嫌気がさして、2、3日に一度、城を抜け出すのが日課になった。

だって、どう考えたっておかしいだろう。元を正せば、悪はオオカミ(こちら)側なのだ。数十代前の愚王が手を出したのは、赤ずきんの家の大切な一人娘だった。蝶よ花よと育てた娘を見知らぬ男にパクリといかれてしまっては、たまったもんじゃない。一族総出で、根絶やしにしてやりたくもなる。……俺はまだ娘どころか、その相手すらいないけど。


そんなくだらない思考を巡らせ、日が暮れたら仕方なく戻る。そんな日常。




でも、変化が訪れるのは、いつも突然で。その変化は、いつしか日常に変わる。

*→



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関西風しらすぅ@坂田家 - 坂田さんの絵本描いてる設定とかリアリティありすぎて好きです。幼いセンラさん天使すぎな。 (2019年6月16日 11時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年5月3日 1時

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