過去 ページ5
.
結城Aという名前は、高校に入学した頃からよく聞いていた。
どこかの大企業の社長の娘。
なんで私立のお高い高校じゃなくて、こんな普通の高校に入学したんだって、入学当初は先生達すら噂していた。
当の本人は、いつも周りに人がいる俺や涼太とは正反対と言ってもいいくらい。
Aは、ほとんどいつも1人だった。
友達はいなかったわけでもないし、ハブられたりいじめられた訳でもない。
いつも教室の隅っこで本を読んでて、"同級生になんて興味ありません"みたいな雰囲気を醸し出していた。
当時の俺とは正反対で、一度も染めたことがない綺麗な黒髪。
容姿の整ったAのその姿は、男子の中でこっそり話題になるには十分で。
まさに高嶺の花だ、なんて言われたりして。
成績優秀で先生達からの信頼も獲得していたあいつは、俺ら派手な連中とは接点も何もなかった。
俺は、そういう周りに流されない彼女の姿に密かに憧れていた…。
―――そんな俺らが会話をするようになったのは、高校三年生の時。
俺はこのままアイドルをするつもりだったけど、周りからの流れもあって大学への進学を考えていた。
なんとなく周りの友達には相談するのが照れくさかった俺は、その日1人で図書室に行って。
俺にとっては慣れないその場所に、
Aはいた。
扉を開けてぶらぶら歩きながら奥へと進むと、誰もいない静かな空間の中で、ページをめくる音だけがして。
渡辺「あ、」
噂には聞いていたけど、こんな風に対峙したのは初めてだったことと、そこに人がいるなんて思わなくて思わず声が出た。
「？」
俺の声に反応して本から顔を上げた彼女。
その瞬間、俺の目は彼女、Aに奪われた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たぬ(プロフ) - まいさん» 最後までお読み頂きこちらこそありがとうございます！そして素敵な感想まで…！とってもうれしいです。また是非別の作品も読んでいただける様がんばります！ (5月15日 20時) (
レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
まい - とても読み応えがあって、一気に読み終わってしまいました…！とても面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (5月14日 20時) (レス) @page48 id: 1f1c71775c (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - rinaboyaさん» コメントありがとうございます！！そう言って頂けてすごくうれしいです。更新頑張りますので引き続き読んでいただけたら幸いです。 (2022年6月3日 18時) (レス) @page9 id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
rinaboya(プロフ) - とても見ててドキドキします！！このふたりがこれからどうなるのか楽しみです！！ (2022年6月1日 19時) (レス) @page8 id: a9150a3a31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たぬ | 作成日時：2022年5月30日 22時
