受容 ページ33
.
そんな……
いつから……？
あいつに会ってから今日まで、抱いていた思いはほとんど変わっていないはず。
それはつまり、出会った頃から。
高校生の頃から、俺はあいつのことを……？
タクシーを降りて部屋に入り、風呂に入りながら、また今日のことを振り返る。
最後のふっかの言葉が、今更になって頭の中で繰り返される。
Aが誰かのものになる……。
想像するだけで、今日感じたモヤモヤが、また一層大きくなるのを感じる。
なんでこんな、イライラすんだよ。
風呂あがり慣れたようにスチーマーから蒸気を浴びて、濡れた髪の毛を乾かして、なんていつものルーティンをこなしていくと、アルコールが少しずつ薄れたのか頭がうっすらと冴えていく。
⎯⎯⎯⎯どんだけ否定したって、逃げたって、やっぱり辿り着く答えは一つしかないんだよなぁ。
渡辺「ははっ、……今更気付くとか、どうかしてるわ。」
濡れた髪の毛を自分の手でくしゃくしゃにしても、情けなさは消えない。
渡辺「……あいつが誰かのものになるなんて、嫌に決まってんじゃん、」
髪の毛からこぼれた雫が、絨毯に染みて広がっていく。
ふっかの問いへの答えはもう出ている。
その理由は、たった一つしかなくて。
渡辺「あーーー。……いい加減、認めるしかねーか。」
認めるってことは、自分の鈍感さとか、この何年もの時間への後悔とか、それをすべて受け止めなければならないということ。
それは俺にとって、簡単に受け入れられるものではなかった、……けど。
けど、ダサい自分のことも、しっかり受け止めて前に進みたいと思った。
だって、この気持ちを自覚したら、シンプルに会いたいと思ってしまったから。
俺の中の葛藤なんてどうでも良くなるくらい、ただあいつとまたくだらない話を隣でずっとしていたい。
渡辺「俺、Aのこと⎯⎯⎯⎯、」
気持ちを認めたものの、言葉にするのはまだ恥ずかしい。
そんな葛藤すらじわじわと恥ずかしくなってきて、俺はベットにダイブして馴染みの枕に顔を埋めた。
そして俺はLIMEを開き、今会いたくてたまらないたった１人に、軽く酔ったその勢いのままメッセージを送ったのだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たぬ(プロフ) - まいさん» 最後までお読み頂きこちらこそありがとうございます！そして素敵な感想まで…！とってもうれしいです。また是非別の作品も読んでいただける様がんばります！ (5月15日 20時) (
レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
まい - とても読み応えがあって、一気に読み終わってしまいました…！とても面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (5月14日 20時) (レス) @page48 id: 1f1c71775c (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - rinaboyaさん» コメントありがとうございます！！そう言って頂けてすごくうれしいです。更新頑張りますので引き続き読んでいただけたら幸いです。 (2022年6月3日 18時) (レス) @page9 id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
rinaboya(プロフ) - とても見ててドキドキします！！このふたりがこれからどうなるのか楽しみです！！ (2022年6月1日 19時) (レス) @page8 id: a9150a3a31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たぬ | 作成日時：2022年5月30日 22時
