修復 ページ23
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「えっ、？」
俺の行動に驚いたAが顔を上げた拍子に、その瞳からぽたりと涙がこぼれ落ちる。
俺は、
気の利いた言葉をかけられない代わりに、
いつかのAと同じように、
彼女の頭を撫でていた。
渡辺「俺、あの時、Aにいきなり距離置かれて、めちゃめちゃショックだった。……正直、今の話聞いても、すぐには、じゃあしょうがなかったなって言えない。」
「……うん、」
渡辺「でも、まぁ、今すぐにはまだ無理だけど、……だけど、俺のことを考えて選択したことだって分かって、よかったとは思うし、納得……していけると思う。」
Aが真っ直ぐ俺を見る。
あの頃と、同じように。
進んだ時間は戻せない。
無かったものは作れない。
だけど、理由がわかった今、俺が望むことは―――。
渡辺「俺、またAと話したりしたいんだけど。そういうのって、無理なの……？」
「！っ、無理じゃ、ない、です」
渡辺「ふはっ、なんで敬語？」
「っ！ごめん、また話したりしたいなんて言われると思わなくて……」
渡辺「なんだそれ。笑 ……じゃあ、連絡先交換してよ。」
「う、うん」
Aは慌てた様子で自分のスマホをカバンから取り出す。
俺は自分のスマホに初めて入ったAの連絡先に浮かれてしまう。
「ありがとう。って、なんか、渡辺くん嬉しそう……？」
渡辺「は？！別にそういうんじゃねーから！な！」
「え？う、うん？」
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それから、俺が仕事に行くまでの間、涼太の家でたわいもない話をした。
「私ね、実は渡辺くんに謝りたくて、父親に無理言って今回だけ特別にヘアメイクとして参加したの。」
渡辺「えっ！！」
「こうやって話せるようになるなら、……勇気を出してよかった。」
彼女はそう言って、高校生の頃とはまた違う顔をして笑う。
「あ。そろそろ行かなきゃ。明日から、またよろしくね。」
驚いた俺は涼太の部屋を出ていく彼女の後ろ姿を、ぽかんと見送るしかなくて。
渡辺「な……！言い逃げかよ！そういう所は高校の時のまんまだな、」
ようやく正気を取り戻して呟いた苦し紛れの言葉は、誰にも届かずに空間に溶けていく。
だけどそんなことどうでも良くなるくらい、なぜか俺の心は晴れやかだった。
そう遠くない未来で、この気持ちの名前を知ることになるなんて、この時の俺はまだ知らない。
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たぬ(プロフ) - まいさん» 最後までお読み頂きこちらこそありがとうございます！そして素敵な感想まで…！とってもうれしいです。また是非別の作品も読んでいただける様がんばります！ (5月15日 20時) (
レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
まい - とても読み応えがあって、一気に読み終わってしまいました…！とても面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (5月14日 20時) (レス) @page48 id: 1f1c71775c (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - rinaboyaさん» コメントありがとうございます！！そう言って頂けてすごくうれしいです。更新頑張りますので引き続き読んでいただけたら幸いです。 (2022年6月3日 18時) (レス) @page9 id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
rinaboya(プロフ) - とても見ててドキドキします！！このふたりがこれからどうなるのか楽しみです！！ (2022年6月1日 19時) (レス) @page8 id: a9150a3a31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たぬ | 作成日時：2022年5月30日 22時
