訣別 ページ17
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最後に見た彼女は、どんな顔をしていただろう。
もう、よく思い出せない。
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それは、突然だった。
いつもと同じ図書室で、いつもの席で。
「ここにはもう来ないで。」
渡辺「はあ？っ、何でだよ、」
「……キミが、芸能人、だから。」
渡辺「は？！そんなの今更だろ！」
「……私とは、住む世界が違う、から。」
「なんだよそれ……？っ、ふざけんな！」
そう怒鳴って、俺はそこから逃げ出した。
"渡辺くん"。
Aからそう呼ばれると、なんだか安心した。
そんなことに、"キミ"と呼ばれて初めて気付いた。
なんで突然。
こんなに冷たくされるんだ？
嫌われた？俺、何かした？
なんで。
なんで……。
⎯⎯⎯⎯何故、Aがそんな風に俺を突き放したのかをちゃんと考えることもせず、俺はそれ以上自分が傷付くのが怖くて、逃げた。
図書室だけが繋がりだった俺らの関係は、俺が図書室に行かなくなれば自然と薄れて。
それくらいの繋がりだったことが、また苦しく、そして無性に苛立たせた。
学校では何度もAを見かけたけれど、一度も目が合うことはなく、彼女は相変わらず教室の片隅で本を読んでいて。
その様子に、こんなに気にしてるのは俺だけなんだと、嫌でも実感させられた。
ただ一度。
無事、志望校に受かった時。
勇気を出して向かった図書室には、もうAの姿はなかった。
渡辺「なんなんだよ……」
誰もいない図書室で、俺の小さな呟きだけが空間に溶けていく。
こんな風に終わるなら、出会わなければよかった。
美人だけど、本ばかり読んでいる変わった女。
俺に媚び売ることも、関心もないやつ。
賢くて優しくて、自分を持っている、人間力の高い同級生。
ただ、それだけだったはずなのに。
いつの間にか、自分の仕事を見てほしい、俺自身を知って欲しい、そう思う相手になっていた。
今までつるんでいた友人に嘘をついてでも会いたくて、今まで周りにいた女子の誰よりも居心地が良くて、心臓を苦しくさせる人。
渡辺「っ、」
２人でよく並んで座った図書室の机の上に、涙がひとつ、無情にもこぼれ落ちた。
こんなふうに心を動かされているのも、自分だけなんだと思うと悔しくて、悲しくて、どうしようもなくて。
渡辺「…っ、…ムカつく、」
⎯⎯⎯⎯そうして、結城Aは俺にとって、世界一ムカつく女になった。
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たぬ(プロフ) - まいさん» 最後までお読み頂きこちらこそありがとうございます！そして素敵な感想まで…！とってもうれしいです。また是非別の作品も読んでいただける様がんばります！ (5月15日 20時) (
レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
まい - とても読み応えがあって、一気に読み終わってしまいました…！とても面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (5月14日 20時) (レス) @page48 id: 1f1c71775c (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - rinaboyaさん» コメントありがとうございます！！そう言って頂けてすごくうれしいです。更新頑張りますので引き続き読んでいただけたら幸いです。 (2022年6月3日 18時) (レス) @page9 id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
rinaboya(プロフ) - とても見ててドキドキします！！このふたりがこれからどうなるのか楽しみです！！ (2022年6月1日 19時) (レス) @page8 id: a9150a3a31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たぬ | 作成日時：2022年5月30日 22時
