case2.Utと同棲。 ページ4
私は今日もあなたの帰りを待つ。
2人で暮らす少し狭いアパートのリビングは1人だと広く感じる。
日付が回る頃、ウトウトしていると、ガチャリと鍵の開く音がした。
『おかえりなさい』
玄関に向かうと顔が赤く染まった彼がいた。
｢ただいまぁ〜、ふぅ〜今日もごっつ疲れたわ｣
そう言いながら彼は私を抱きしめる。
｢Aちゃん、待っとってくれたん？身体冷えとる…｣
『うん、今日はどうしたの？』と聞くと｢接待での｣というあなた。そんな彼から、安っぽいシャンプーの匂いがした。
｢酒飲んでるし臭いやろ？抱きしめてごめんな、起きて待っとってくれたAがいじらしゅうてがまんできへんかったわ。｣
そう言い残して私に荷物を預けて彼は浴室へ向かう。
『ううん、お酒臭くはないよ』
彼が消えた玄関でそう呟いた。
。
。
。
私は彼の全てを知っている。
好きな食べ物も、好きなアーティストも、好きなゲームも、女の子のタイプも、どこにいるのかも、何をしてるかも。
今日の接待も嘘だって知ってるよ。
だって、今日、定時に職場からでてたもんね。
そのあと、夜の街でホテルに行ったことも知ってるよ。
もちろんそこで何をしたのかも。
愛しいあなたの声と、汚い女の声が聴こえたんだもの。
私はあなたが浮気をしていることも知っている。
こっそり仕込んだGPSと盗聴器が全て教えてくれる。
でもね、あなたは私の場所に帰ってきてくれるな、、そんなことは赦してあげる。
。
。
。
考え事をしていたら、背後から人の気配。
｢Aちゃ〜ん、冷えとるから俺があっためたるわ｣
そう言ってお風呂上がりでポカポカの彼に背後から抱きしめられた。
彼の熱が移って冷めた身体が温まってくる。
『鬱くん、あったかくて気持ちい…』
後ろの彼に擦り寄ると、彼からごくりと生唾を飲む音がした。
『Aちゃん…』
｢ん、いいよ｣
これは何も知らない彼と全て知ってる私の話。
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