Case 11.Piと同棲。 ページ30
なんでこうなってもうたんやろ。はぁ、とため息を吐きながら普段絶対家ん中で吸わん煙草に火を付けた。
窓も開けず、換気扇も回さず、部屋のど真ん中でひをつけ床をじっとりと見つめながら考え込む。煙は、上に上がっていくのに俺の心はずっと下向いたまま。
……きっかけは些細なことやった。ただ、俺が原因なのは目に見えた。こんなにも心が落ち込んでしまうほどお前のことが好きなのに、お前のことを傷付けてしまったのが酷く、酷く。
「……ほんま、ごめん、A」
ぐしゃり、煙草を握りしめ瞳を瞑った。
.
「……ショッピ？」
「……A？」
見られたくない所を見てしまった。
いつも雑にあしらっている女が今日は酷く迫ってきた。それも仲間を連れて。それが原因で今こうしてこの女といる訳だが。
集団で「泣かせるなんて酷い！」とか「一切話も聞かないのはどうなの！」とか言い集られては流石の俺もどうしようもなかった。
上司に見られては「行ってやったらどうかね」と言われてしまい、仕方なく一度、遊ぶことになった。デートだぁ！と目の前で小さな身長でクルクルと回る女に反吐が出る。
同じ小ささであるはずなのにどうしてこうも違うのか。溜息をつきながら適当な格好をして、適当に煙草吸いまくって臭くして、ボサボサのまま出てきたと言うのに。
「ショッピくーん！カッコイイね！」
なんて言いながら腕にまとわりついて離れない。「離れてくれます？」と言っても「今日だけデートでしょ……？」とうるうるとした瞳を見せられては女共や上司のことが頭によぎった。
どうしたらここから開放されるのか、はぁ、と溜息をつきながらさながらカップルかのようにデートさせられていたのが先程まで。
で。
今に至るわけだ。
目の前には俺の愛しい彼女が目に涙をいっぱい浮かべこちらを見ている。なんで、と言う困惑の色が見て取れる。違う、弁明を口にしようとしたら。
「あ、妹さんですかぁ？私、千夏っていいます！ショッピくんとお付き合いさせてもらってますぅ。」
甘ったるい口調で頬を染めながらそう言う目の前の女。……吐きそうだ。ぎゅ、とから娶られた腕を振り払おうとすれば鋭い痛みが走ってそれは止められた。
……痛い。ゆっくり振り返れば瞳からポロポロと涙を零している彼女が目に入った。違うんだ、今すぐ、弁明して。そう思うのに伸ばした手は空を切る。
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