どうせなら、同棲でも。【Hokuto.y】

煮ても焼いてもきみがすき ページ43

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「あ、今日リモートで会議あるからリビング貸して欲しい！あと絶対じゃましたらダメだからね」
「はあ！？！？」


朝、いつものようにAにくっついて洗面所とキッチン、食卓を囲んで、さあこれからいちゃいちゃしようと思っていたら、衝撃の一言を言い渡された。

無理、無理だ。絶対に無理。
Aと何時間も離れなきゃいけないとか考えられない。


Aのお風呂の時間も待てないのに、それ以上の時間離れたら、多分普通にしぬと思う。

息ができなくなって、固くなって、最後は砂になって消えちゃうけど、それでもいいの？とAに伝えるけど、やば着替えなきゃの一言でスルーされた。
俺、可哀想すぎる。



いつもよりしっかりめのメイクをして(可愛い…)、髪も緩く巻いて(可愛い、)、スーツを着た(可愛い！)Aはどこからどう見ても可愛いのに、リモートとは言え、他の男が見るってそれ本気で言ってる？
いやリモートだからこそ、Aを画面越しで見てナニしてるか分からないのに。
誰だよそいつぶっ飛ばすぞ。

リモート会議とやらが始まるぎりぎりまで、Aの側で不機嫌であることをアピールしたけど、全く取り合って貰えない。
と思ったら、そわそわと視線を泳がせながら、Aの綺麗な指が伸びてきて、前髪をかき分けられ、額に柔らかい唇が落ちてきた。


「ちょ、ちょっとだけ、待っててね」
「ず、ずるい…！！」


恥じらいながらそう呟くAに、多分一生分の心臓が動いた気がする。
ばくばくと早い鼓動は収まらないし、情けないくらい顔が赤くなってると思う。

…あーもーズルい、どこで覚えたのそんなの。
誰にでもやってんのそれ、前の男にもやってんの？
誰だよそいつぶっ飛ばすぞ。


「おはようございます！よろしくお願いします」


少し離れたところで、パソコンを立ち上げたAが画面のカメラに向かって、ニコニコと営業用のスマイルを振りまいている。


…いいなあ、同じ会社のやつらはあんなに可愛いAの顔をタダで見れてんのか。
俺はどんだけお金払っても絶対に見れない、仕事中のAの顔だ。

俺だって同じ会社に勤めてたらさあ、Aを狙うきもい男から守ったりさあ、昼休みは一緒に社食食べたりさあ、華の金曜日には一緒に居酒屋行ったりさあ、「会社では付き合ってるの秘密だからね！」ってAに言われて誰もいない会議室でちゅーしたりさあ。


そういうの、すっごいやりたいのに。くそ。



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