どうせなら、同棲でも。【Hokuto.y】

ミラクルしか信じない ページ31

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最近のAは、会社が休業から在宅勤務に変わったみたいで忙しそうだ。
今まで通り家にはいるし、パジャマ代わりの俺の服を着たままの事もあるけど、パソコンに向き合ってしっかり「お仕事」をしている。
出勤時間の入力のなんちゃらの関係で、朝起きる時間だって早い。
今日も暫くモゾモゾと自分と格闘してから漸く意を決したようにAがベッドに腰掛けた時には、一部始終をすぐ横でされた俺もすっかり目が覚めてしまっていた。
そうして目が覚めてすぐ、寝ぼけたフリでAを引き止めるのはここ最近の日課かもしれない。
困らせているのも、上手いこと軽くあしらわれるのも分かっている。
でも、この後暫く構ってもらえないのも分かってるんだ。
今くらいはほんの少しの可愛い我儘と思って、許してくれてもいいと思う。


「…ん、おきるの」
「あ、ごめん起こしちゃったね」
「んー」
「まだ寝てていいからね、ごめんね」
「一緒にねよ」
「今日仕事の日なの」
「…おれは？」
「？ほくちゃんはお休みでしょ？」
「おれとは遊んでくれないんだ」
「あー、仕事終わったらね〜」
「Aにすてられたー」


わざとらしく嘆いてみても、慣れたようにハイハイとかわされてしまうけど、そんな反応が返ってくるであろうことは想定済みだ。

多分、もうすぐ、なんだろうことは分かってる。
全部が今まで通りとまでは行かずとも、主にAの方の日常が戻ってくるのはもうすぐそこだ。と、思う。これは予想を超えて、ほぼ確信に近い。
最近のAの仕事の長さとか、そういう雰囲気の電話の頻度を見れば、それは何を見るよりも明らかで。
でもそうなってしまえばこの生活はもう、……これはまだ考えたくないけど。
だからこそ今日も明日も、いつまで続くか分からないこの日々を大切にしたいのに。
こんな風に思っているのはきっと俺だけなんだろうな。
そりゃAもほんの少しは思っているだろうけど、いや思ってくれていないと結構本気でショックだけど、俺のそれは比にならない。


「おれもおきる」
「まだ寝てていいのに」
「一人じゃやだ」
「ほくちゃん最近早起きだよね」
「Aが早起きだからだよ」
「なんか起こしちゃってるみたいでごめんね」


そういうことじゃないんだけど、と呟いてみるけど、え？と首を傾げられて、全く気持ちが伝わらない鈍感さについムッとしてしまう。



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