どうせなら、同棲でも。【Hokuto.y】

出口のない迷路の入口 ページ21

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近くで人の声が聞こえて意識が浮上してくる。
まだ寝たい気持ちが勝って、それに抗うようにして寝返ると、額を何かにぶつけた。
なんだこれ、横に、なんかある。
確かめる為に仕方なく重い瞼を持ち上げると、暗がりの中で見慣れた赤髪。
こちらを向いてあ、Aおはよと微笑むその手の中のスマホは自分に向けている。


「明日、一日密着動画撮るから」


昨日のほくちゃんとの会話が思い出されて、サアアっと一気に眠気が覚めて冷静になる。
今更どうにもならないことは承知の上でとりあえず布団を頭から被って小さくなると、何故かその上からのしかかられた。


「終わった、無理、公開？それもう公開してる？」
「ちがうーあとで出すやつ。取り直すから大丈夫」
「よかったあ！！！今、ホント、おわったと思った…」
「すごい顔必死でおもしろかった」
「ほくちゃん！！」


悪びれもせずにへらへら笑うほくちゃんも、まだ寝ぼけてて舌ったらずな話し方だ。
まだバクバクしてる心臓を抑えながら、乗っかってるほくちゃんを転がして退かし、布団から出る。
まだ眠たいし微睡んでいたいけど、もう一度撮り直すと思うし、今ここに自分がいれば邪魔な事は明らかだ。


「え、いっちゃうの？」
「あたりまえでしょ！今日は別行動！」
「えーーーAーー」


ぐでーと寝転んだままのほくちゃんに後ろから何度か名前を呼ばれるけど、寝室の扉を閉めて聞こえないフリをしておく。
よし、今日は私も自分の仕事を進めよう。
一つ気合を入れて、ほくちゃんがやってくる前にさっさとメイクをしようと洗面所へ向かった。


初めてここに来たあの日に比べて、スッピンを見られることに抵抗が無くなってきた気がする。
というか、洗面所を使う時間がどうしても被るし。
ほくちゃんは私より少し早く起きるから、起こされることもしばしばな私だけど、ほくちゃんは起きてからの行動はなかなかゆっくりだ。
好きな人相手に、というかそれ以前にすごーく深い仲でも無かった相手に対してこんなに曝け出した感じでいいのかとも思う。
けど、元々の性格は直らないだろうし慣れてきたってことで、うん、前向きにね。
洗顔と下地を終えたところで洗面所の扉が開いて、思わず身構える。


「まさかまわして…」
「ない。今から歯あ磨くー」
「じゃ、リビングでメイクしていい？」
「うん」



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