どうせなら、同棲でも。【Hokuto.y】

ストーリーの裏側で ページ19

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今日一日、Aは急ぎでない書類を片付けると、パソコンに向かっている。
見慣れない仕事姿は、なんだか別人みたいで、カッコよくて大人っぽい。
けど正直、世界の遠さを感じて嫌な部分もある。
俺は暇だから話題のあのゲームのスマホ版の方をやってたけど、結局集中しきれずに、Aの様子を窺っていた事、多分本人は気付いてないだろうな。


Aがふうと一息ついたところで、自然な流れで休憩に誘った。
俺の気遣いに感謝するAに、そろそろAと話したくなっただけの自分の我儘だったのに、少し後ろめたい気持ちになる。
ソファに座るAにココアを入れてあげて、自分も隣に腰を下ろせば完璧だ。
ここに来た頃は肩の触れる距離感に照れていたAも、気付けば慣れっこになってる。
良いのか悪いのか分かんないけど。


Aが綺麗な指でスマホをいじっているのを横目で見ていた。
SNSの画面が丸見えだけど特に隠す様子もないので、見ても大丈夫なやつなんだ、と勝手に判断する。
そうか、Aだってインスタくらいやってるよな。
Aの指が誤ってか訳あってか自分のプロフィールに飛んだ時、綺麗な顔で笑うAの姿が目に入って思わず声が出た。


「あ、」
「ん？」
「それ」
「大したアレじゃないけどやってるんだよね」
「ね、みたい。見ていい？」
「…いいけど、おもしろくないよ？」
「やった！見して！」


はい、とスマホを渡されたので一緒に画面を覗き込む。
幾つかある投稿は、風景や食べ物の写真が多いけど、中には友達と笑い合うAとか、友達に撮ってもらったAとか、頬を緩めてしまうような可愛い写真もあった。
屈託のない笑顔で笑うAはすごく、可愛い。
これは多分、俺の贔屓目なしにしても。


「ねえ、この写真ある？」
「え？うん」
「後で送って」
「はい？いらないでしょ」
「元気なくなった時に見る用」
「あ〜バカにしてるやつじゃん！」
「は？ちがうって！」


反論したけど冗談みたいな扱いされて取り合ってくれなかった。
…別に、可愛いAの顔見たら普通に元気でるだけだし。逆になんで分かってくれないのか分かんない。


その後も、これはどこに出掛けた写真とかこの時に何があったとかAが横から教えてくれた。
Aの口から語られる事でただの写真が鮮やかに見えてくるのが不思議だ。
楽しげに話す目の前の横顔と、写真の中の笑顔と、どれも大切に拾いあげていく。



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