どうせなら、同棲でも。【Hokuto.y】

迷子の真心 ページ15

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今日のAは朝から少し変だった。
何日か過ごしてみて意外にAが朝弱いことは分かってたけど、中でも今日は俺がご飯を作り始めたところで漸く謝りながら起きてきた。
それに、化粧もご飯食べるのも洗い物も時間がかかってた気がする。
いつもなら俺がまだ食べてる間に洗い物を始めてるのに、今日は食べ終わるのも同じくらいだった。
そう思うとずっと険しい顔してるし口数も少ない気がする。

おかしいな、と洗い物してる後ろ姿を眺めていたら、終えたAがほくちゃん、といつもより弱った声でそう言ってきた。
嫌な予感もするけど、正直それよりもいつもと違う雰囲気で名前を呼ばれてドキドキしちゃった。


「お願いがあります」
「なに？」
「その、買い物に行かせて欲しくて」
「え？」
「ダメかな、」
「…どうしても？」
「うっ…どうしても」
「俺、行ってくるから何欲しいかいって」
「いや！それはいい！私行くから！」
「なんで？いつも俺行ってるじゃん」
「そう、なんだけど…」


歯切れが悪いAに自分でもこんな風に思いたくないし、コントロールしたいのに、だんだんイライラしてくる。
今までこんなこと言ってきたこと無かったし、賢いAが最初の日の話だけで分からなかった訳ない。アーティストの俺に気を遣ってくれてるのも普段すごく感じてる。なのに、何で今日は。
はあ、と溜息をついたら見るからにAが申し訳なさそうな顔になる。
でもここで俺も引くわけにはいかないから、Aあのさ…と極めて優しく声をかけようとしたら、遮るようにして声を張り上げられた。


「お、おんなのこの日で！」
「は？」
「あの、つけるものが足りなくて…ほくちゃんに買いに行ってもらうのも、その」


精一杯の遠回しの言葉に、Aのいつもと違う姿が全部繋がった。
朝中々起きてこなかったのも、ご飯食べるのに時間かかってたのも、アレも、それも全部。
…俺、バカみたいじゃん。


「あんまり体調良くない？」
「ちょっと…」
「ああもう、ちゃんといえよ」
「…ごめん」
「待ってごめん、おこってない。俺何も知らないのにAにキレようとしてて、自分にイライラしてるだけ」

「やっぱ俺が行ってくるから、買わなきゃいけないのLINEいれといて」
「いやでも」
「いいから、Aはゆっくりしてなよ」


ぽんと頭をひと撫ですると、頑固なAにしては大人しく食い下がった。
やっぱりあんまり元気ないんだ。顔色も良くないかもしれない。



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