時透無一郎の許嫁 弐

６６　霧川雪菜じゃない？！ ページ43

A『二人とも、止めて！
霧川さんに聞きたい事があります。』


霧「五月蝿いわね。
私に聞きたい事なんてないくせに。」



A『私の事、憎みすぎ！
ねえ何で私の事、嫌いなの？』




ずっと聞きたかった。

私が忘れてたせいで、嫌な気持ちになった事は
分かった。


もし私が貴方なら、記憶の有無に関わらず
不快な気持ちになっていたでしょうね。






でも、それとは違う。
その前からだから。







似ているの。
でも、分からないの。





あまりにも違うから。









もし私が人の気持ちが読めたなら、
すれ違いなんて起こらないよ









どうしたら良いの？









私といたら、皆不幸になる。









記憶の中の貴方に手を伸ばす。







急に空が暗くなったと思うと、
降ってくる土砂降りの雨。









慌てて傘を開く。






あれ、、、今日、傘、持っていってたっけ？









緑に赤のチェック柄の傘。


クリスマスカラーで、いつも１２月ごろから
使っている。






傘に叩きつけられた雨が雨音を奏でる。









私の隣には、霧川さん。



二人とも楽しそうに笑っている。









霧川さんの傘は、真っ黒だ。


あれ？声が聞こえてくる。




A『Aね、雅音と一緒に
テニスを始めようと思うんだ♪』


霧「へえ〜。テニスかぁ。
ーーもやってみたい！」



A『ーーちゃんも一緒にプロ目指そうよ♪』



霧「うん！」






そうだ、、、、


貴方の名前は、、、、、





霧川 雪菜じゃない、、、



無「、、、A！」



A『むいちろ、、、』







無「また心配かけてさ。
どうしてくれるの？」




A『無一郎、、、
あの人、霧川雪菜じゃない、、、』



無「えっ？！どういう事？」




A『覚えているでしょ、無一郎。』




無「まさか、霞澤 美冷？！」






無一郎は怯えたような声を出す。


A『う、、、、ん。そうだと思う。』







私の声も震えている。



霧川雪菜、こと霞澤美冷は、
私達の近所に住んでいた女の子だった。





至って普通の女の子。






その当時は人懐こかった私は、
よく似た女の子とすぐに仲良くなったの。

無一郎も。





ただ、有一郎と雅音は「嫌な感じがする」
と言って距離を置いていたと思う。







それに従っていれば、こんなこと、起こらなかった
のかな。





いや、一度仲良くなると、彼女から離れる事は
出来ない。


彼女はそういう人だから。

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