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9話 ページ9

何をいまさら……なんて思っちゃうけれど、僕はずっと勝生君のことを”勝生”くんと名字で呼んでいたのだ。それに対して勝生君は”A”くんと名前で呼んでくれて、そりゃ距離置いてるようにも感じるけれど、僕にとってはもうそれが当たり前のことで、今更変えろなんて言われても無理な話だ。


「今更だってことは、分かっているんだ。だけど、せっかくこうやってまた会えたんだから、ね?」


『え、じゃあ、勇利くんでいい?』


 ベッドに座った彼は、僕のこの答に少し不満を持っているようだ。くんをつけたじゃないか!僕にとってはそれが精一杯の答えで、もう何もできない。


「”勇利”って呼んでほしいな」


 あれ、この子ってこんなに大胆だったっけ。大人になったらそりゃ変わるよな。性格も生活も。僕は勇利くんの前に座っていたけれど、腕を引っ張られてそのままベッドに座らされた。恥ずかしいとかそんな感情は全く起きないけれど、いや、その前に僕男だし。


『勇利、これでいい?』


「うん、僕はそのままA君でいいよね」


『は?僕と同じで呼び捨てでいいじゃないか』


「あ、えっと、僕は、あはは」


『誤魔化したよね、今。まぁいいや、僕の方年下だけど、勇利って呼ぶよ。他の人にはそのまま敬語で行くけれどね』



 僕が敬語で話す理由はみんなが年上だからとか関係なく、自分自身が”敬語”という壁を作ることで、人の心にズカズカと入ってきてほしくないからだ。勇利は一緒にいるからいいとして。


「面白い話をしているね、俺も入れてよ」


 いきなり、英語が聞こえてきたと思ったら、扉の向こうに一つの気配がする。そういえば、さっき。ヴィクトルと勇利が言い争っていたのを廊下でこそっと聞いたな。部屋に入るか入らないかの言い争いだったのか。


「ヴィ、ヴィクトル!?だ、だめです!!」


「どうして?コーチとしてまだ話したいことがたくさんあるっていうのに」


「それは、さっきもお話ししたでしょう!?」


「つれないなぁ、勇利は。あ、Aもいるの?」


 急に僕の名前を呼んできて、びくっと体がはねた。勇利はいつの間に知り合いに!?って顔をしていたから、温泉でと答えると納得したような表情を浮かべる。僕が無言なのを確認した勇利は、ここにはいないと、ヴィクトルに言った。その答えに納得したようなため息をついたヴィクトルは部屋に戻っていった。

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設定タグ:ヴィクトル・ニキフォロフ , 勝生勇利 , ユーリ!!!onICE   
作品ジャンル:恋愛
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オブジェ(元はるかわ)(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください! (2017年3月21日 0時) (レス) id: 58695a87c5 (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - マリンさん» ありがとうございます!少しわかりにくい文章があったりしてすみません……。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: 0baf07c6ee (このIDを非表示/違反報告)
マリン - とっても面白いです〜〜続き楽しみにしてます!! (2017年1月22日 17時) (レス) id: 78f600e7bb (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - 進さん» ご指摘ありがとうございます!すみませんでした。 (2017年1月5日 15時) (レス) id: 6c38952fe1 (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - 鯨さん» ご指摘ありがとうございます! (2017年1月5日 15時) (レス) id: 6c38952fe1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:道化師龍維 | 作成日時:2017年1月2日 22時

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