14話 ページ16
『そうじゃなくて、ただ……、なにか困っているんじゃないかって……。あ、ごめん』
誰かにAくんが謝っている。誰なんだろう。本当に。何か、胸が痛くなってきた。病気?
そのまま話を聞いていると、彼の口から”クリス”……、その名前が出てきたことが分かった。クリスなんてそんな珍しい名前ではない。……英語、だよね。Aくんが話している言葉って。
『ふふ、そこまで大きい声を出さない限り勇利が起きることはないよ。大丈夫』
今度は、僕の話?
『僕は滑らないですよ。プロの人の目の前で滑るなんてそんなことはできない』
滑る?プロ?何の話?
もっと聞きたいと思ってそっと身を乗り出してみると――――――。
『それ以上言ったら、たとえクリスでも怒りますよ』
――――――!!
分かった。Aくんはクリス……”クリストフ・ジャコメッティ”と話をしているんだ。分かった、漸くわかった。滑るって……スケートのこと。プロ、僕たちスケート選手のことを指していたんだ。Aくんはスケートのことになると……いや、本気、または怒ったときに敬語になる癖がある。
『あ、ごめんっ……。ただ、僕は……っ』
敬語になったことを謝っているんだろう。あの子は優しい。僕よりもメンタルもあって、スタミナも……。
『そうだったね、僕もクリスの顔見てみたいなぁ』
クリスの顔、見たことないんだ……。見たらどんな表情をするんだろう。今度、会わせてみようかな。
『誘拐?ふふ、一度でいいからそんな経験もされてみたいもんだね』
誘拐!?だめだめ!!!
『クリスの言葉は本気に聞こえるから怖い』
本気というか、もう駄目だよ。存在自体……は言い過ぎか。
『来るくらいならいいんじゃない?コーチと相談してからね』
コーチのことを知っている?どこまでスケート選手のことを知っているんだろう。てか、コーチと相談してOKもらったら誘拐されちゃうってこと!!?(違う)
『うん、待ってる』
……え、待つの!?
『うん、またね』
その言葉を言ったAくんはスマホを右耳から離して少しの間蹲った。クリスと何か特別な関係だったのだろうか……。まさか、恋人?いや、そんなわけない。だってクリスもAくんも男だ。男同士の恋愛なんて聞いたこともない。いや、もしそうだとしたら、僕勝ち目なくない!?
……あれ、なんで今。勝ち目ないだなんて思ったんだろう。
作者から(別に読まなくてもいい感謝の言葉)リクエストがどうたらこうたら。→←13話
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オブジェ(元はるかわ)(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください! (2017年3月21日 0時) (レス) id: 58695a87c5 (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - マリンさん» ありがとうございます!少しわかりにくい文章があったりしてすみません……。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: 0baf07c6ee (このIDを非表示/違反報告)
マリン - とっても面白いです〜〜続き楽しみにしてます!! (2017年1月22日 17時) (レス) id: 78f600e7bb (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - 進さん» ご指摘ありがとうございます!すみませんでした。 (2017年1月5日 15時) (レス) id: 6c38952fe1 (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - 鯨さん» ご指摘ありがとうございます! (2017年1月5日 15時) (レス) id: 6c38952fe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:道化師龍維 | 作成日時:2017年1月2日 22時