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12話 ページ14

『あ、ごめんっ……。ただ、僕は……っ』


「ごめん、触れたらいけない話題だったね。いつか、俺の前で滑ってくれるだけでいいんだ。俺はそれだけで嬉しいんだ」



 クリスの申し訳ない声が聞こえる。申し訳ないのは僕の方だ。地雷を踏まれてしまって逆ギレをしてしまった僕に責任がある。クリスはずっと僕に滑ってほしいと言っている。僕がスケートをしていると話してしまった時から。SNS上の会話で冗談のように僕がいつか滑れるようになりたいと言ったから。


 その言葉をずっと叶えようとしていたのがクリス。選手だからどういうストレッチをしたらいいかとかたくさんのアドバイスを僕なんか一般人にくれる。


「まだ、時間大丈夫?テレビ通話みたいにしたいんだけど。まだAの顔を見たこと……」


『そうだったね、僕もクリスの顔見てみたいなぁ』


「っ……、その言葉はとっておきな。枷がなかったらスイスに連れ去って一緒に暮らしたいのになー」


『誘拐?ふふ、一度でいいからそんな経験もされてみたいもんだね』


「その言葉、本気にするぞ?」


『クリスの言葉は本気に聞こえるから怖い』


「ははっ、一度日本に行ってもいいかい?会いに行きたいんだ」


『来るくらいならいいんじゃない?コーチと相談してからね』


「絶対行けない奴じゃないか。じゃあ、待っててね」


『うん、待ってる』


「話せただけで調子も戻りそうだ。じゃあね、A」


『うん、またね』


 ――――――プツン。


 僕とスイスはネット上の恋人同士だった。高校の時彼女と別れたあと、ネットに没頭した僕は慰めてもらおうとクリスにすべてをぶつけた。するとクリスは「恋人になる?」なんて冗談かと思ったその空リプについ「おーけー」と返事をしてしまった。


 その次の日に自我を取り戻した僕はクリスに言ったけれどそれは解消されなくて、周りから男と付き合ってるなんて言われたらクリスも嫌じゃない?だなんて聞いたりするけれど、クリスは気にも留めていなかった。


 別れたのはつい最近だ。GPFに出て銀メダルを取ったクリスから言われたものだった。本当につい最近の出来事なのにまた友達のように接してくれているクリスは、本当に大人だと思う。


『僕も会いたい……。全部の、お礼として……』


 がちゃ……。


 扉が開いた音が、勇利の部屋のほうから聞こえた。

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設定タグ:ヴィクトル・ニキフォロフ , 勝生勇利 , ユーリ!!!onICE   
作品ジャンル:恋愛
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オブジェ(元はるかわ)(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください! (2017年3月21日 0時) (レス) id: 58695a87c5 (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - マリンさん» ありがとうございます!少しわかりにくい文章があったりしてすみません……。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: 0baf07c6ee (このIDを非表示/違反報告)
マリン - とっても面白いです〜〜続き楽しみにしてます!! (2017年1月22日 17時) (レス) id: 78f600e7bb (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - 進さん» ご指摘ありがとうございます!すみませんでした。 (2017年1月5日 15時) (レス) id: 6c38952fe1 (このIDを非表示/違反報告)
道化師龍維(プロフ) - 鯨さん» ご指摘ありがとうございます! (2017年1月5日 15時) (レス) id: 6c38952fe1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:道化師龍維 | 作成日時:2017年1月2日 22時

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