合法的に、真っ直ぐに【ヒロアカ】 (ページ1)

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神酒屋:オリジンページ1

私の実家は新潟の老舗酒蔵・神酒屋酒造。

高祖父の代から受け継がれてきた"醸造"の個性を使って造る日本酒『神の涙』はテレビや雑誌数々のメディアに取り上げられ、店頭に並べば30分も経たずして完売。
そのあまりの人気ぶりに神の涙は尊敬と畏怖を込めて幻の酒という異名で呼ばれていた。

日本中の人に愛される神の涙
そして、神の涙をその手で作り上げる父は、私の誇りだった。

…しかし5年前、ある転機が起きた。

先代が酒造りにあたり個性の商業利用の許可を得ていなかったことが発覚したのだ。

うちの酒蔵は超人社会が産んだ違法メーカーとして全国局で報道され、顔も知らない一般市民や競合他社からの非難、リピーターや個性の使用権利拡大を訴える団体などの擁護とさまざまなな場所からさまざまな思惑絡み合う声が上がった。
そのあまりの混乱からうちの酒蔵は小売店に神の涙の自主回収を申し出たほどだった。

人々の関心が薄れたあとは、良い意味でも悪い意味でもうちの神の涙は人々の目にとまることはなくなった。
ごくごく少数の懇意にしている酒屋でしか出回らなくなり、当然ながら酒蔵の経営は傾いて、生活はどんどん苦しくなった。

跡取り息子である二つ下の弟は、先代譲りの醸造の個性というだけで学校でいじめに遭い不登校になったし、
食う米にも困るような生活だったから、白米の代わりに酒米を炊いて主食にしていた。

神の涙をまた、たくさんの人に飲んでもらいたい。
私はそんな思いを抱えながらも厳しい経済状況を悟り、高校への進学を小学5年生して早々に断念して早くも中卒を受け入れてくれる働き口を探していた。

そんな私に一筋の光が差したのは、それから3年後。
中学2年生の夏だった。

その日新潟は歴代類を見ない大型台風に見舞われていた。
普段は節約命の我が家も、さすがに契約農家の状況が心配だったのか珍しく夕方のニュース番組をつけると、そこには信じられない光景が映っていた。

暴風の中靡く、逆立った金髪。

台風のせいで倒れた鉄塔を片手で支えながら、もう片方の手で年老いた女性を抱える、大男。

『私が来た！！』

こんな豪雨の中、そんな風に叫んだそのヒーローは圧倒的な存在感を放っていた。

「これだ…」

信頼、尊敬…神の涙が、私の父が失った全てを持って、その人は私の前に現れたのだ。

「…父さん、私、ヒーローになる」

これは私、神酒屋Aがヒーローになるまでの物語だ。